劇場公開日 2018年11月9日

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「社会に揺らされる二人」生きてるだけで、愛。 Koheiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0社会に揺らされる二人

2024年5月16日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

難しい

2023年度後期のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」でヒロインを務めた趣里が主演する映画を鑑賞した。趣里が演じる寧子は、恋人の津奈木(菅田将暉)と同棲しているが、過眠症を患っているため、まともな社会生活を送れない。あるきっかけでカフェでアルバイトを始めるが、過眠症のために寝坊や遅刻、欠勤が続く。彼女は社会生活に適応しようと努力するが、自らの社会との噛み合わなさを感じる。

この作品の主題は、寧子がどのように成長していくかではない。医学的な助けがあれば彼女の生活は改善するかもしれないが、寧子はその助けにアクセスする手段を知らない。津奈木自身も心の余裕がなく、寧子を支えることができない。そのため、彼らの関係は恋人らしいものとは言い難い状況にある。現状を変える気がないのかと苛立つ観客もいるかもしれないが、この作品は人生における八方塞がりの状況を鮮烈に描き出している。このような時こそ、視野が狭くなってしまうものである。

社会に「適合すべし」という「答え」をこの作品は提示しない。寧子の姉が「早く働け」と電話で圧力をかけてくるが、寧子自身はそれを拒絶する。寧子がアルバイトをすることになったのも、本人の意思とは無関係な理由であった。だからこそ、社会に「適合させられる」ことへの違和感を、寧子と津奈木そしてその周辺の人々の生き方を通して表現している。

この作品は、観客に自己の価値観や生き方について、社会が提示する「答え」を拒絶することを示唆する。だが、それが新たな「答え」となるかどうかを判断するのは、観客一人ひとりであろう。趣里の演技は複雑な感情を見事に表現しており、多くの人に観てほしい作品だ。

Kohei