「青と赤の一瞬の美しさに心を掴まれた。」生きてるだけで、愛。 puccinoさんの映画レビュー(感想・評価)
青と赤の一瞬の美しさに心を掴まれた。
重くて暗い内容かと想像していましたが、そんなことはなかった。
私は男なので津奈木目線でずっと寧子を観てました。
恋愛ってこんなだったよな…なんて自分の苦い過去を思い出したりして。
たまたま自分が好きになった彼女が躁鬱で過眠症で家庭の事情が複雑だっただけであって。
男なら好きになったからには寄り添ってあげたい、力になりたいという感情が少なくとも湧く。
でもどうしてこんな彼女を好きになったのか。
津奈木の目に彼女が美しく見えた瞬間が2度あった。
初めて出会った夜の街を突然走り抜ける寧子を追いかけている時に見た彼女の軽やかに舞う青いスカートと、
ブレーカーが落ちた暗い部屋の窓から入り込んだネオンの灯りに照らされて赤く浮かんだ寧子の表情。
津奈木は前半、突然走り出した寧子を追いかけている時に楽しそうな表情を見せた。
後半、赤く浮かんだ寧子の表情を見て突然彼女を抱きしめた。
津奈木と寧子が出会った夜、会話を交わすうちに津奈木の心に寧子は土足で入り込んできて
津奈木の心に爪痕を残してそして走り出して行った。この時、津奈木はすでに寧子に心を奪われている。
そう。私も寧子に心を奪われてしまいました。
解き放たれたように夜の街をこの上もない笑顔で駆け抜ける寧子の姿に。
まるで美しいものを初めて目にした時のように一瞬で心がときめいてしまった。
「その一瞬のために生きている」 まさにそうだ。
お互い自分の事で精一杯な時は、気持ちや感情のすれ違いなんてよくあること。
津奈木は寧子の一瞬の美しさに心を掴まれたのだ。
寧子が彼の前で踊って見せたのは自分に対する津奈木の思いもよらなかった言葉を聞くことができた幸福感と、失敗はしたけれど一歩前に踏み出すことが出来た自分への喜びの素直な気持ちの現れなのかもしれない。
最後は二人の再スタートを予期させるいい終わり方だった。
そういえば屋上での会話。
「バイト始めたら、全裸になっちゃった」って…
思わず笑ってしまった…可愛すぎるよ寧子ちゃん。
もう完全に鬱は治ってるよ。自信持って!
明日バイト先に一緒に謝りに行こう! なんて。