「私と別れたかったら別れたっていいよ。だけど私は、私と別れたくたって別れられないんだよね。」生きてるだけで、愛。 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
私と別れたかったら別れたっていいよ。だけど私は、私と別れたくたって別れられないんだよね。
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はっきり言うと、趣里は苦手な役者だ。嫌いとは違う。上手いとは思う。だけど、あの雰囲気が苦手なのだ。自分にとっては例えば大竹しのぶがまさにそうで、とにかく画面に出ているだけで、ぞわぞわしてくる。言葉にすれば「妖気を感じる」と言えばそれに近い。
菅田将暉にはいつも狂気を感じる。こいつ、いつ急に豹変するのだろうと、目が離せない。それは趣里への感情とは違って、期待しかない。細かいことをいうと、あのツンとした鼻が好きだ。あの鼻をした人間からは冷徹さと知性があるように思えて、その素性がいつも菅田の演じる役に投影されているように感じてしまう。
そしてこの映画は、まさに僕の感じた二人そのものだった。いや、それ以上かもしれない。冒頭のジャズセッションのような音楽からぐいぐいと引きずり回された。常識人のような田中哲司や西田の存在が時折、何気ない日常に戻してくれるが、すぐにまた趣里の妖気が僕の気持ちをかき乱す。「生きているだけで、ほんと、疲れるよ」の台詞、当人はさぞ苦しかろう、と思うと切なくなった。もう、細かい部分なんてもうどうでもよくなった。壊れそうだった二人の関係が、とろけ合うような「ほんの一瞬だけ分かり合えた時」を共有したがために、これから先の人生、ずっと関わるざるを得ない将来が見えた。それを見せてくれた二人の役者の演技に最高にしびれた。
菅田将暉はとうにそう思っていたけれど、趣里、末恐ろしいわ。
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