「愛しているなら福祉を利用しろ」生きてるだけで、愛。 kkmxさんの映画レビュー(感想・評価)
愛しているなら福祉を利用しろ
さほど面白くなかったですが、とりたててつまらない映画ではなかったです。
本作は演出に雑さが目立つように感じられました。ヤスコとツナキにもっと焦点を当てることができたと思いますが、アンドウさんのようなアバウトなお笑いキャラが入ってくることで揺らぎが生まれてしまう。
個人的には、ヤスコがバイトするカフェのリアリティに疑問符が。結構繁盛していますが、あんなボランティアみたいなカフェってあるの?夜はお酒出す店みたいだし、ヤスコみたいな社会参加が難しいレベルの人が出来る仕事ではないと感じました。
なので、途中から「このカフェはひきこもり当事者等の人たち向けの就労移行支援をしているNPOか何かである」と言い聞かせてました。実際、先輩の女の子も元ひきこもりだったみたいですし。しかし、嫁さんがデリカシーゼロ発言したりするので、それはそれでリアリティに問題がありそう。
個人的には細かい部分が気になるとあまり映画に集中できないタチなので、そこまでハマれなかったのだと思います。
一方、ヤスコの苦しさはかなり伝わりました。一般的な生きづらさと言うよりも、精神疾患の辛さといったほうがしっくりくるような気がします。あれだけ生活リズムも衝動もコントロールできないとキツいですよ。些細な不安に囚われて動けなくなるとか、かなり重い疾患だと思いました。ホント、バイトとか早すぎですよ。
保険に加入してないので医療にはつながっていない様子。余計なお世話ですが心配です。保健所等、公的な福祉施設を利用してほしいです。ケースワーカーさんが間に入るだけでも、随分と生きやすくなると思います。ツナキもただ支えるだけでなく、メンタル病んだパートナーのためにもっと勉強すべきです。
物語は好きです。特にクライマックスは、ツナキがなぜ彼女を支えているのかが判明し、納得できました。ヤスコの逃れられない苦しみの吐露も胸に迫りましたし、なかなかのシーンだと思います。
が…そんなクライマックスにも明らかな無駄演出が!アイツがいる意味わかんないし、本当にやめてほしいです。クライマックスに至る脱ぎ捨て描写とか、『エンドレス・ポエトリー』のそれとは違い、劇的にするだけの装飾演出に思えてしまう。丁寧さが感じられず、どうしても本作への抵抗感は拭えませんでした。
キャストについては、なにより贔屓の石橋静河が出演していて嬉しかったです。知らなかったので、彼女が出てきたときはびっくりして、お得な気分を味わえました。やっぱり石橋静河は声がいいな〜。声がいい女性は魅力ありますね。