「私の知らない振り込め詐欺の世界」ギャングース とえさんの映画レビュー(感想・評価)
私の知らない振り込め詐欺の世界
面白かったなぁ
描いているのはダークな世界でも、前向きに作られていて、楽しみながら観た作品
3人の主人公たち、サイケ(高杉真宙)、カズキ(加藤諒)、タケオ(渡辺大知)は、少年院で出会い、共に育った仲間たち
彼らは、窃盗をしながら生計を立てて生活をしているが
なかなかうまくいかない
しかし、ある日、カズキが身寄りのない少女ヒカリを保護してから、彼らにも運が向き始め…
この物語の背景にあるのは、振り込め詐欺を行なっている詐欺グループの実態
少年院のような施設から社会に出た少年たちは、まともな仕事に就けず
やがて、お金を持っている年寄りから金を奪った方が楽に稼げると考えるようになる
そして、彼らは組織立った詐欺グループを形成するようになる
主人公の3人組は、そんな詐欺グループから金を奪って「ちゃんとした社会人の生活」を手に入れようと夢見るようになる
そんな彼らの物語を
実録!あなたの知らない振り込め詐欺の世界
っていうルポを見てる気分で楽しんだ
そこで思ったのは
こういうサギは、永遠になくならないんだなぁということ
財布のひもが緩いお年寄りがいて
何をしても上に上がれない貧困層の若者たちがいる限り、その構図がなくなることはない
だからこそ、主人公トリオが、そこを突破して明るい未来を築いてくれるんじゃないかと期待して観てしまう
彼らは、ろくに漢字も書けないような子たちだけど、なんとかはい上がって、人並みな生活を手に入れようと必死になっているところが良い
その前向きで力強いパワーで、彼らの世界に引き込まれた
ただ、私としては、少年院を出た彼らが、まともな職に就けない現状について、どこに問題があるのかと、どうすべきなのかを提示して欲しかった
この映画を観て思ったのは、社会とは、金さえあれば幸せな生活ができるところではなく、どんな環境で生まれて育った人も、自由に働くことができるところであるべきだということ
だからこそ、
彼らが、底辺でもがきながら、光の差す方を目指して必死になるのは、良いけれど、その前に、もっと叩くべきところがあるんじゃないかなと思ってしまった
それとも、社会を変えることを諦めるべきなのか
それに、この手の貧困層のダークな世界を描いた作品は、韓国映画にはいくらでもあって、やっぱり、そういう世界の描き方は、韓国映画の方が何枚も上手だなと思ってしまう
それでも、こういう社会の底辺を描いた作品が作られることはとても大事だし、広くたくさんの人に知ってもらうために、若手俳優をたくさん起用して、エンターテイメント作品になっているのは、とても良いことだと思う