「1人でも味方がいれば希望になる」ヒトラーを欺いた黄色い星 とえさんの映画レビュー(感想・評価)
1人でも味方がいれば希望になる
悪人とされる集団の中にも、良心を失っていない人はいて、戦争のような時こそ、そういう人たちが希望になると感じた作品
タイトルにある「黄色い星」とは、第二次世界大戦当時、ドイツ軍がユダヤ人に身につけることを義務付けていたワッペンのようなもの
その頃、ベルリンにいたユダヤ人は、1人残らずドイツの東側にある収容所へと送られた
そのため、その「黄色い星」を身につけた人たちはベルリンに1人もいないことになっていた
しかし、実際には、ベルリン市内に潜伏して生き延びた人たちが1,500人程度いたとされ、その中から4人の実話をインタビューと再現ドラマで描いた作品
原題の「Die Unsichtbaren.」とは「透明人間」を意味している
ベルリンに潜伏していたユダヤ人は、2〜3年の間、そこで生活しながらも、存在してはいけない生き方をしなければならなかった
ということは、周りの人たちの協力が不可欠になる
最終的には、周りの人たちの個々の人間性が、ユダヤ人の生き死にを左右することになる
もちろん、そこに潜伏して、息をひそめて生きていかなければならない人たちが、一番気の毒だけれど
私の心に強く残ったのは、そういう「協力してくれた人たちの温かさ」だった
中には、同じユダヤ人の中にも、生きていくために、同胞を裏切って、ナチに情報を密告していた人たちもいたのに
危険を承知で匿ってくれるドイツ人や、あえて、根掘り葉掘り聞かないドイツ人もいた
戦時中のような危機の時こそ、そういう人間の本質が出るし、
もしも、目の前にいる人が迫害されるようなことがあれば、私は、弱者の味方に立つような人間でありたいと思った
潜伏していた人たちは、生き残ったからこそ、こうして映画になったけれど、
ユダヤ人だとばれて殺されてしまった人たちの方が多かったのだ
これは、運良く生き残った人たちの証言を残した貴重な記録でもある
彼らの証言を観ながら、私たちは「なぜヘイトクライムがいけないのか」を学ぶべきである
一人一人の差別や偏見が、やがて、こうした虐殺へとつながっていくのが良く分かるからだ
こんな表現は不適切かもしれないけれど、私はこの映画を観ながら、
「永久に鬼に見つかってはいけない鬼ごっこ」
をしている気分になった
鬼に見つかった時は殺される時なのだ
それは、ホラー映画ではなく、実際にあったことであり、どれだけ恐ろしいことなのか
誰でも想像がつくことだと思う