「同じ男を愛した男女が、その気持ちを分かち合う」彼が愛したケーキ職人 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
同じ男を愛した男女が、その気持ちを分かち合う
クリックして本文を読む
世の中、どれほどLGBTの人がいるのだろう。例えば世の中に眼鏡をかけている人は多い。でも、ふだんかけていない人はいる。その人に、さりげなく「ああそうですか、いつもは眼鏡かけているんですか」とちょっとした会話をするように、LGBTの人たちの好みをためらいなく偏見もなく話すことができるようになる世間はいつ来るのだろうか。映画を観ながらそんなことを考えていた。
すでに映画紹介に書かれているので言ってしまうが、まず二人の男が愛し合う。その片方が事故で亡くなり、もう片方が、亡くなった男の元へと訪ねていく話。同じ欧州でもラテン系の人間がこのストーリーを描けば、すこぶる情熱的なものになるのだろう。ところがこの映画はドイツとイスラエルだ。国民性をとっても宗教観をとっても、地味で禁欲的なものになりそうだった。実際、派手な展開は特にない。前半なんて、凡長な時間ばかりが進み、もっとはっきりせい!と苛立ってしまった。でも、その時間が作り上げたものは、決して無駄ではなく、残された二人の間で芽生えた愛情が純粋であることを、僕の中で納得することができた。それに、お母さんは気付いていたね、息子の好みのことも、トーマスのことも。余計なセリフもなく、結局あんな結末で終わってしまったが、あれはあれで素晴らしいエンディングだと思う。イタリアなら追いかけたろうか?フランスならテーブルに座って待っていたであろうか?彼女はあのあと、どんな行動をとったのだろうか?それを思うだけで、切なくて仕方ない。
コメントする