「魂の叫びは、映画のなかで永遠に生き続ける」ラ・チャナ shironさんの映画レビュー(感想・評価)
魂の叫びは、映画のなかで永遠に生き続ける
本作は一人の女性のドキュメンタリーと言うより、彼女の魂の叫びを体感する映画でした。
彼女の内側から生まれる狂気じみたリズムには、生きる喜び、苦しみ、楽しさ、悲しさが詰まっていて、
ステップだけではなく、指の先、髪の毛の一本一本までが叫んでいるかのよう。
日常に映像を持ち込める時代において、あえて劇場に足を運ばないと浴びることの出来ない映像体験でした。
劇場と言えば、ラストの舞台は圧巻で、これぞ劇場がもたらしたマジックだったと思えます。
「踊っている時だけ自分でいられた。」と自身も語っているように、
古い映像に残された彼女の踊りは、実生活の抑圧からの解放が原動力になっていたことはあきらかですが
とても優しいご主人と、可愛いワンちゃん、そして心地よいリズムに包まれた今の生活の中では、昔のようなパッションは無くなってしまっているのでは?
身体も痛み、昔のようには動かないのに…。と危惧していましたが
劇場は、演者と観客のセッションの場なのですね。
ステージで彼女の動きが止まった時の緊張感。
次の動きは、見守る観客達のパワーによって生まれ出る。
彼女の内なる叫びは、彼女一人から発せられるものではなかったのでした。
コンパスを信じて全身全霊をかけて踊り、劇場に身を委ねる。
何かが降りてくる奇跡の瞬間に立ち会った気がしました。
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