「パルムドールを獲るべくして獲った作品」万引き家族 お水汲み当番さんの映画レビュー(感想・評価)
パルムドールを獲るべくして獲った作品
たしかにこれはパルムドールを獲るべくして獲った作品でした。
練りに練られたシナリオと細部まで神経が行き届いた演出。
小さなあばら家の中で身を寄せ合う6人全員の演技には息を呑むばかりです。
ちゃぶ台があり、登場人物たちがそれを囲んでいるという構図は、何千回も目にしたはずの「ホームドラマ」なのですが、観ている2時間のあいだ、凡多のホームドラマとの類似性について一瞬も頭をよぎることがなかったことこそが、独創性の証明だったのだと、今思うのです。
セリフを使わず演じられる多くのシーンのメッセージが、欧州人という文化背景が異なる人たちにも間違われずに伝わったことは、驚くしかありません。
幸せとは何か。
それは結局のところ、自分が自分のことを幸せだと思っている状態を指すのだろうな、と感じたのでした。
映画が進むにつれて、人間関係の糸の絡みがほぐれてくるのですが、しかし、ほぐれることは無条件に良いことなのか?
果たしてそれで幸せになれるのか、と観客に鋭く問いかけています。
これでカンヌを獲れないわけがない仕上がりでした。
ps.ムービーウォーカーのあらすじ欄に「団地の廊下で凍えている幼い女の子を見つける」とありますが間違いです。
あらすじ担当者は、映画を観ずに書いたのかも知れませんが、正しくは、真冬に、団地のベランダに締め出されていたのです。5歳の女の子が。
昨日発覚した哀しい事件が、偶然とはいえ、まったく完全に同じシチュエーションであったことがオーバーラップするのでした。
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