「持たざる者はどう生きればいいのか」万引き家族 電磁波サボテンさんの映画レビュー(感想・評価)
持たざる者はどう生きればいいのか
生まれてくる親は選べない。家庭は選べない。
まともに子育てしてくれてお金もそれなりにある親の元に生まれたらラッキー。でもそうじゃなかったら?
お金もない、知恵もない、家も暖かいご飯も愛情もない。常識もない。なし崩しで生まれた子どもをネグレクトする。感情にまかせて虐待する。その子どもが大きくなって、また同じような連鎖を生む。
もし自分がそんな環境で育たなくてよかったらラッキー。でも、見えないだけで、運悪くそんな親の元に生まれてしまった子どもやそのまま大人にならざるを得なかった元子どもはとてもたくさん存在している。
持たざる者はどうやって生きればいいんだろう。幸せという文字が吹いて飛んで行ってしまうその日暮らし。運よく大人になれたらいいよね。でも子どもにとっては今ある環境がすべて。大人にとってさえ、一度道を踏み外したら、セーフティネットからあぶれてしまったら今のこの日本の中でどうやって生きればいいの?
ないものは奪うしかない。弱かったら死ぬしかない。
寄せ集めの疑似家族の中で、みんなが欲しかったのは誰かと繋がっているという感覚。そして生きるためのお金。みんな本当の家族の中でそれは得られなかった。映画の中で流れる一つ一つのエピソードが印象的に全体像を描き出し、最後へと向かっていく。
見ていてしんどいのはそれが日々現実世界で起きるニュースの事件の一コマごとの、中身を辿っていったらきっと、そのうちのいくつかはこういう背景があるのではないかなと容易に想像できるから。
各役者さんたちの演技があまりに素晴らしすぎてあまりにリアルで心をもっていかれてしまいました。1週間ぐらい引きずりそうです。