「倫理観のない家族」万引き家族 よしさんの映画レビュー(感想・評価)
倫理観のない家族
万引き家族というタイトルから、貧乏で万引きで生計を立てている家族の話なのかなと思っていましたが、貧しいというよりもむしろ倫理観がない家族の話でした。倫理観がないから万引きをしても気がとがめないし、怪我で仕事が休めるとなったらラッキーと思うような人たちです。
でも、それって彼らが倫理観が元々ない人々というよりも倫理観を失わざるをえなかった、誠実に生きるために必要な考え方をその境遇によって奪われた人々なんじゃないかと思います。『万引き家族』というタイトルは万引きをする家族ではなく、(道徳的なものを)万引きされた人々の集まりという意味なんじゃないかと思いました。
この家族は最後に散り散りになってしまいますが、それはお互いが大切だったから離れることを決意したように感じました。
ちょっと気になったのが松岡茉優と池脇千鶴の役柄なのですが、松岡さんが演じた亜紀だけはこの家族から切り離されているような印象を受けます。つながりがおばあちゃんだけで、この家族を愛していたかと言うとそうではない、本当の家族への当て付けで一緒に暮らしていたと思うのでこの役の必要性を感じません。松岡さんは熱演していて良い役者だと思いますが、亜紀役がいなくても話として成立するのでは?むしろ亜紀がいることで是枝監督の映画の意図が読みづらくなってしまったように思います。
警察役?の池脇さんの演技についてもなぜ憎たらしい演技をさせたのだろうと疑問です。取り調べのときにあんな嫌なかんじで、弱っている相手を泣かせて追い詰めるような話し方をするでしょうか。もっと淡々としていた方が心に響いたと思います。信代(安藤サクラ)がかわいそう、という感じを出したかったのかもしれないですが。
批判的なことを書きましたがこの映画は観て良かったです。賞を取る映画はやっぱりすごい。面白かったです。