「相手の心境を慮る、の連続」万引き家族 幸せなひまつぶしさんの映画レビュー(感想・評価)
相手の心境を慮る、の連続
のっけから万引きするシーンってどうよ、と思いながら、それが日常で当たり前なんだ、っていう世界に一気に引き込まれる。
歯が抜けたら屋根の上に投げる、とか、塩なめたらおねしょが止む、とか、安藤サクラや松岡茉優の団欒中の些細なセリフとか。
是枝監督の作品でいつも感じる、「あぁ、そういう人いるいる」「そういう事よく言う言う」という既視感というか、臨場感というか。
万引きして生活してるとか、おばあちゃんの年金に寄生してる部分があるとか、その価値観には賛成できないのに、なぜかいつの間にか彼らを許容し、彼らの視点で社会を眺めているのは、そういう、人と人のとの関係性やつながりってそうだよね、そういうのあるよね、と共感できる部分が様々な場面に散りばめられているからだと思います。
他の方もおっしゃってるように、刺激的なラストとか、幸せな結末があるわけではない。
映画館の広いスクリーンで鑑賞するに耐える映画か、と問われると、それでなくてもいいのかもしれない。
で、結果、何を訴えたいのか、という人もいると思う。
でも、問題提起や、テーマが、必ずしも無くてもいいんではないかと思う。
それが現実だから。
現実ってそれ以上どうすることもできないから。
そういう人もいる、
わかる部分もある、
そんな現実を知って切なくなる、
相手の心境を思って涙が出そうになる、
そんな時間を過ごせたので、
自分としてはありがたかったです。
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