「タイミングの良さと画を楽しむ」メイズ・ランナー 最期の迷宮 Don-chanさんの映画レビュー(感想・評価)
タイミングの良さと画を楽しむ
世界コロナパンデミック前に公開されたフレアウィルスの物語。
タイトルのメイズ・ランナーの意味を考えてみると、「迷路」「当惑」「困惑」という意味のメイズ(maze)を走る人(ランナーは、広義には「運ぶ人」や「配達人」などの意味も含む)だから、あながち外れていない。
邦題のサブタイトルが『最後の迷宮』で、いかにも最終章のようなタイトルだが、原題は、メイズ・ランナー・ザ・デス・キュア(Maze Runner: The Death Cure)。サブタイトルは『死を免れない病の治療』である。
ウェス・ボール監督は、印象に残るシーンを撮るのが上手い。
宮崎駿監督のように先にイメージボードありきでカメラアングルや構図を決めているかのように、画のセンスの良さを感じる。そのシーンになるようにシチュエーションを後から付け足しているのかどうかまでは知らないが、まあいつもタイミングが良い。こうなって欲しいと思う通りに偶然が重なり、その安心感のせいで緊張感がないことがある。
今作には食事シーンがない。ラスト「さあ食べよう」と台詞があるが、マグカップしかない。何を飲んでいるかすら徹底的に見せない。
架空の世界の食事シーンは難しい。
何を食べているかによっては、ストーリーが良くても評価が下がる場合がある。例えば肉を美味しそうに食べたらヴィーガンやベジタリアンが嫌がったり、その他にグルテンが嫌だとか加工品が嫌だとか人によって受け入れがたい氣持ちになるということがあるし、何をどのように調理して食べるかまでの設定が難しいということもある。
現代とかけ離れた別の世界観を丁寧に描写しようとして料理したり食事をすれば、当然排泄のこともやらなければならなくなるから大変。
と、まあ見せたいシーンばかりやって生活感をおろそかにしているところはあるが、いちいち迫力があるし良いシーンが多くあり、満足した。