「ヒーローへの反感、ヴィランへの共感」ワンダーウーマン 1984 JJJJJさんの映画レビュー(感想・評価)
ヒーローへの反感、ヴィランへの共感
当方DC初心者の為、前知識無しでどれだけ楽しめるのか、そしてMARVEL作品との比較をテーマに劇場へ向かいました。
この作品の魅力を引き出しているのはヴァーバラの存在でしょう。自己肯定感の低い彼女が身の丈以上の力を得てしまい、それまでの反動で欲望に走る姿は目を当てれません。酔っ払いを蹴り倒すシーンは一線を超えた瞬間で恐怖でした(音楽が恐怖を効果的に引き出している)。マックスの場合は息子の存在が歯止めをかけましたが、ヴァーバラはそんな存在も居らず、最後まで変わるきっかけは訪れませんでした。悲劇的なヴァーバラですが、彼女はあくまでも真っ直ぐなんですよね。私はそんなヴァーバラに親近感を湧きました。
因みにもう1人のヴィランであるマックスですが、正直中途半端でした。前述した通り、息子の存在が彼の欲望にストップを掛けたのですが、散々悪を尽くした癖にあっさりと我に帰るのは拍子抜けでした。ついつい、自分の欲望の為に娘を殺したサノスと比較してしまいます。この辺りはMARVELが描く世界観のスケールに違いを感じました。
一方、ワンダーウーマンことダイアナ。最近のヒーローは正義感だけでなく欠点も持ち合わせており、我々はそれに親しみを抱くもの。しかし、ダイアナは容姿も能力もパラメーターがMAXで、その古典的なヒーロー像は一周回って新鮮でした。そんな彼女が愛する人と離別して強くなるシーンは悲しくもあり美しかったです。
ただ、そんな神秘的な存在故、反感も覚えてしまいます。彼女の台詞は、パラメーターMAXな彼女だから言えるんです。ダイアナの綺麗事を聞く度に「おめーだから言えるんだよ!」と心の中で突っ込んでしまいました。憧れと反感の両方が入り混じるなのはヴァーバラも同じだったみたいで、やはり私はヴァーバラに感情移入してしまいます。
さて、ここまでキャラクターを中心に感想を書いてきましたが、総合的に判断するとイマイチでした。ヒーロー物の要であるバトルシーンは、チーターと化したヴァーバラとワンダーウーマンが対峙した瞬間が1番の盛り上がりで、それ以外は興奮することもなかったです。MARVEL作品を散々見た後だからつい物足りなく感じてしまうんですよね。個人的にはワンダーウーマンの圧倒的な強さをもう少し見たかった。
後、この映画は「最短距離で成果を出す事の是非」を問うているわけですが、ヴァーバラみたいな借物の力を得る事 には非ですが、冒頭のトライアスロンでの頭脳プレーは是ではないのでしょうか?(アマゾネスの頂点に立つにはズル賢さは減点なのですかね)
そういった点も含め、全体的にスッキリしない作品でした。