「うーんどうなんだこれは」ワンダーウーマン 1984 akumonさんの映画レビュー(感想・評価)
うーんどうなんだこれは
1は死にかけのDCユニバースに息を吹き込んだ快作でした。
2である「1984」はどうかというと、尺はたっぷりあるのに少し物足りない印象です。
今回のストーリーラインは、「なんでも願いを叶える魔法の石」を軸に形成されています。フィクションの世界では、まあ古典的とも言える設定ですね。
本作も例にもれず、うまい話には必ず代償があるわけですが、テーマにしている割に本作はそこがどうにもぼんやりしていると思いました。
ダイアナ、バーバラ、そしてマックスから始まり、やがて世界中の人間が好き勝手に願いを叶えはじめることで、物語はとんでもない方向に展開していくわけです。
…いや、いいんですよ。いいんですけど、あまりにも規模がでかすぎないですか?
全世界、もうひっちゃかめっちゃかの滅茶苦茶ですよ。マーベルになりますが「アベンジャーズ インフィニティウォー」の指パッチン後と同じくらいひどい状況かもしれない。
結局マックスの力で願い事をした世界中の人々はダイアナの言葉に胸を打たれ自ら願いを取り下げることで事態の収拾を図るわけですが、そんな簡単にいきますか?
みんな願いを取り下げるなんてありえるかな?全員が取り下げたかどうかも描写があるわけじゃないのでわかりませんが。
仮に全員が願いを取り下げたとしても、前述の通りもう世界はめちゃくちゃになってるわけですよ。無秩序と化した結果失われ、戻らない命もあるでしょう。それが世界規模で起きてしまったあとなわけです。
マックスはヒーロー映画史に残るほどとんでもない悪事を働いてしまったわけで、それが最後は自分も願いを取り下げて息子のもとに帰りなんとなく良い感じに終わる…なんてあってはならないと思うんですよ。彼はちゃんとヒーローに負けて、手痛い「代償」を払うべきだったのでは?
だからダイアナには、「魔法の石」と戦って勝ち、全てを取り戻してほしかった。マックスのように魔法の石の「抜け穴」を探して、暴力では勝てない相手に「知恵比べ」で真っ向から勝利するのが最も美しい結末だったのではないでしょうか?(冒頭の近道をしたシーンはここの伏線かと思ってました)
身体が強いだけではなく聡明なワンダーウーマンであるならば、それができたはずなのでは?
まあ人々の良心が魔法の石に打ち勝った、と肯定的な見方をすることもできるでしょう。が、私はそうは思えなかった。もっと言えば魔法の石自体が倒すべき相手として描かれているとも思えなかった。
人間の要求は基本忠実に叶えてくれるし、大した代償も求めないし。(普通、こういうのって要求を意地悪に解釈して登場人物を苦しめたりするもんですけどね…)
もしかしたら倒すべき相手は人間の欲だとかエゴ、という風に描きたかったのかもしれません。そこは前作もそうでしたね。
しかし、ならばそもそも論ですけど、願いを取り下げてしまえるという設定はよくなかったと思うんですよ。「報酬と代償」というテーマがぼやけてしまう気がするんですよね。
結局まともな代償を払った人って、今作いましたっけ?後で取り消すとはいえ、願い事「し得」じゃない?これ。
それって、描きたかったことに合ってます?
というような理由で、私は本作のストーリー自体はあまり評価していません。それでもじーんとくるようなシーンは多々ありましたし、ダイアナの魅力はたっぷり描けていました。
スティーブとの絡みは素晴らしかったですね。女性監督ならではの感性というか、二人のパートはロマンチックで素敵でした。
そしてなんといっても本作のパンチラインは、スティーブとの再びの別れのシーンでしょう。願いを取り下げて、涙ながらに力を取り戻しながら全力疾走するダイアナは本当に美しく格好良かった。自分のエゴよりも世界を選んだこれ以上なくヒロイックな名シーンです。
あとは、戦闘シーンは漏れなく格好よかったですね。光る縄(名前なんでしたっけ)は今回大活躍で、縄のアクションは画がすごくスタイリッシュでスクリーン映えするなと感じました。
うん。嫌いじゃないんですけどね。ちょっと期待が高すぎたかもしれません。