劇場公開日 2018年9月28日

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「さらりとしたラブコメにアイデンティティにまつわる緊張と緩和が見事に絡み合う作品」クレイジー・リッチ! えすけんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0さらりとしたラブコメにアイデンティティにまつわる緊張と緩和が見事に絡み合う作品

2023年4月5日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

NYに住む大学教授でチャイニーズ・アメリカンのレイチェルが友人の結婚式参加のため、彼氏の故郷であるシンガポールに同行するが、彼は同国では国王クラスの桁外れの金持ちだった。

まず「そんな欲望まで金で買えるのか」といったような、野放図な金持ちの道楽っぷりが、観ていて愉快である。あと、ラブコメディによくある、「あー・・・」が随所に仕込まれているのも楽しい。ニック、お前、しっかりせえよ何度も語りかけたくなる。さらに彼女のレイチェルが、いわゆる「スタイル抜群の絶世の美女」ではないところも気が利いている。

そんな割とありがちなラブコメディの中に女の、個人にはどうしようもない属性とアイデンティティの混在がスマートに描かれている。

例えば、金持ちと庶民。チャーニーズ系シンガポール人とチャイニーズ系アメリカ人。裕福だが越えられない血の中で耐え忍んだ母と、自由だが孤立無援の中で耐え忍んだ母。

同じ人間、同じチャイニーズ系、同じ母なのに、相手の「違い」ばかりに目がいくニックの母・エレノアの鋭い眼差しは、彼女自身が長きにわたって戦ってきた軌跡を悲しく映し出す。

さらりとしたラブコメに、そんなアイデンティティにまつわる緊張と緩和が見事に絡み合っている。

ちなみにハリウッドで主要出演者が全てアジア系の役者で作品が撮られ、しかも興業的にそれなりに成功している点も高く評価したい。日本人俳優が出ていないのが少し残念。

えすけん