「巨大化した”おさるのジョージ”による怪獣オマージュ」ランペイジ 巨獣大乱闘 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
巨大化した”おさるのジョージ”による怪獣オマージュ
ゲノム(遺伝子)実験で作られた試薬が事故によって漏洩、動物保護区にいるゴリラ、オオカミ、ワニを巨大化させる。3頭は凶暴化して大暴れ、街を襲う...。原題のランペイジ(rampage)とは、"暴れまわること"。
原作として1986年のアーケードゲーム"Rampage"をベースにしているが、「トゥーム・レイダー」と同じく、ゲーム自体が映画的設定をなぞっているとも言えるので、原作の源流はやはり映画だろう。
設定もさることながら、予告映像でもB級パロディ感たっぷりだが、実際は伝統的な怪獣パニック映画の流れを汲む、オマージュ作品だ。もちろん名作エッセンスを見事なほど取り入れている。
さて、まずは怪獣の誕生要因を、"遺伝子操作"としたのは、"ジュラシック・ワールド(ロスト・ワールド)"からの引用である。
また巨大化した動物の"モンスターパニック"という、オーソドックスな設定は「キング・コング」(1933)を原点とする亜流であり、キング・コングと差別化するために"白毛のゴリラ"、"人間と手話で会話ができる"、といった現代的なアレンジが加えられている。
複数の怪獣同士が戦ったり、さらにその中に人間の味方がいるというのは、"ゴジラ"や"ガメラ"である。ワーナー映画は、「キングコング 髑髏島の巨神」(2017)を皮切りに、まさに怪獣のシリーズ化を目論んでおり、同スタジオによる亜流アプローチは、単発とはいえ微妙だ。
怪獣の中で最も巨大で大暴れしていた"ワニ"の進化形怪獣のデザインには、"エリマキトカゲ"または"コモドドラゴン(コモドオオトカゲ)"の要素が見られる。これは、元祖"キング・コング"を考案した映画監督のメリアン C・クーパーが考えていた、"コングをコモドドラゴンと戦わせたい"という構想を見事に映像化している。実にマニアックだ。
人間と意志疎通ができる白毛のゴリラの名前は、"ジョージ"である。親しみを込めて絵本「おさるのジョージ」から引用したのだろうか(笑)。
オリジナルは3D版なので3Dで観たいが、IMAXないしは4D系スクリーンを選択しないと3Dで観られない。IMAXで観てもシネスコ画角であるが。
(2018/5/19/TOHOシネマズ日比谷/IMAXではなくシネスコ/字幕:松崎広幸)