「不器用ですから」心と体と masakingさんの映画レビュー(感想・評価)
不器用ですから
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左腕が利かないエンドレと、心も体も含めて他者との接触に抵抗感のあるマーリアが、同じ鹿の夢を見る。鹿の夢が、果たすことができない自己実現を意味するのか、性欲の象徴なのか、それ以外の啓示なのかは分からないが、2人の男女が不器用ながらも距離を縮めていくきっかけとして、これ以上にロマンチックなことはなく、年甲斐もなく微笑ましい気持ちでなりゆきを見守った。
2人ともとにかく不器用なので、そのかみあわなさに笑いが込み上げる。エンドレが少し距離を置きたがった気持ちにも非常に共感できたし、マーリアがそこに果てしなく絶望するのも理解できた。だからこそ、何とかハッピーエンドを迎えてほしいと願いながらの鑑賞であった。
エンドレの利かない左腕に、マーリアがそっと手を添えるラストシーンで、とても優しい気持ちになってしまった。
ブダペストの夕暮れ時、孤独の切なさと誰かに出会うかもしれない期待感を併せ持ちながら電車に乗る毎日を夢想してしまう。かすかに灯る街灯が、どうしてかノスタルジックに映った。
屠殺場という凄惨な職場など、脚本上の巧みな状況設定や作品デザインが感じられる。エンドレが、「(牛に対する)哀れみの気持ちがなければ勤めることはできない」と面接で語る場面が印象的であった。
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