「泣けるというよりは…」人魚の眠る家 づかさんの映画レビュー(感想・評価)
泣けるというよりは…
時間ができたので何か映画を見ようと半ば消去法的に選んで見た作品。一言で言えば考えさせられる作品だった。
テーマは「人の死とは?生きるとは?」といったところだろうか。これ自体は昨今よく見かける脳死を題材としたものである。ただ他の作品と一線を画すのは登場人物の多様性だ。
娘へ盲目的な愛を捧げる母、親としての立場と世間体に揺れる父、次第に手段と目的が逆転していく研究者、第三者の立場であり彼らに翻弄されるその研究者の彼女など、脳死した一人の少女を中心とした、様々な人物の多様な向き合い方が描かれている。どの観客にも登場人物の中に一人は、脳死について現在の自分と同じ考えをもつ者がいることと思う。
デリケートな題材で明確な解を用意することが難しいだけにどのような結末を辿るのかハラハラしながら観ていたが、最後にキッチリと伏線を回収して綺麗に終わらせるあたり、さすが東野圭吾作品といったところである。すっきりと感動して泣ける作品ではないが、人の死生観について鑑賞前にはなかった視点を得られる、深く考えさせられる作品である。間違いなく一見の価値はある。
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