劇場公開日 2019年3月8日

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「かかわった人全部負け」シンプル・フェイバー うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5かかわった人全部負け

2022年6月11日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

初めの10分は、何が起きるのかワクワクしながら魅入られました。典型的な尻すぼみ映画。アナ・ケンドリックとブレイク・ライブリーの顔合わせはいいケミストリーを生み出すようで役柄にもよくマッチしていると思います。

それにしても、かなり初歩的なトリックが使われていて、残念な気分になりました。クロはクロ、シロはシロかと思いきや、シロもクロだという結末には失望感が大きいです。原作がどの程度改変されたのか分かりませんが、このままなら、ひどい原作と言わざるを得ません。

アナの歌唱シーンはさりげなくダンスのおまけつきでファンにはうれしい演出。でも、映画の尺の長さを考えたら、思い切ってカットして良かったと思います。もう少し短くまとまっていたほうが、後半までの勢いができたはず。そのアナが、ストーリーを追っていく役なのに、途中で見る人の期待を裏切るような行動をするのでなんとなく嫌な気持ちになります。彼女を応援したくなくなるというか。

ブレイクは一見、悪役のようでいろいろ事情を抱えた難しい役柄。彼女にもう少し凄味があれば、奇抜な設定も説得力が生まれて引き込まれたに違いないと思います。女どうし秘密を告白する時に、お互いが嘘を見破るシークエンスは見事な心理戦で、映像が上手に見る人をリードします。この時のブレイクは見事な演技をしており、ファンとしては少し溜飲が下がりました。最近キャリアが落ち気味で、もう少し頑張って欲しいところ。

=====以下ネタバレ=====

ブレイクの役には不満しかない。現実直視で、実は視聴者の期待と興味は彼女に集まっているのに、安易な設定と最低限の説明だけで、役に説得力がなかった。双子を演じ分けるのに、顔のほくろのことにひとつも触れていないので気になってしょうがない。「タトゥーが一致するから本人」みたいな識別するなら、大胆な保険金詐欺を強調した演出にすればよかったのに。

アナの役にも不満が残る。コメディシーンでいい味を出しており、見る人の共感を得るのに、子供の世話をしているうちにブレイクの夫とも深い仲になるあたりは背徳感が漂い、その辺の葛藤が難しい。「女は複雑なのよ」とか言いたいのなら、まじめキャラは強調してほしくない。ブレイクが死んだ後、彼女のドレスとかバッグ、靴を処分するシークエンスでは、難しい心理描写があるだけに、二面性が上手く表現できてない。

監督にも、ちょっとがっかりした。女性を主人公にした映画を得意とするようで、今回メリッサ・マッカーシーとは組んでいないが、彼女のコメディは好きだっただけに、この顔合わせは新鮮で、新しい可能性に期待した分失望が大きい。

2020.2.19

うそつきカモメ