劇場公開日 2018年6月1日

  • 予告編を見る

「脚本がねぇ……モンスター級。」ビューティフル・デイ ytoshikさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0脚本がねぇ……モンスター級。

2020年5月26日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

知的

難しい

見よう見ようと思っていて、邦題がビューティフルデイだから、後回しに。w
ホントもう邦題つけるのは金輪際必要ない。見事な字幕翻訳はあるが、邦題に出会った事は一度もない。

本編は、見事な脚本に尽きる。トラウマの本質は、本人もどういう記憶で、どんな作用があるか、分からない事。こんなトラウマを抱えてますなんて、トラウマではない、単なる嫌な記憶。みたいな。

忘れた、忘れたいが、戻って来るのがフラッシュバック。あなたはここにいなかったという母親の、消去というかリセットを今度はジョーが少女にするのかもね。まぁお互いかな。

少女が知事を殺して今までの自分と決別してセルフ救助した事は、ジョーにはできなかった事で、なんだ、こうやればいいのかって笑い泣き。

道のりは長いけど、自分と決別して分からない未来に踏み出すのは、二人にとってもはやお散歩です。過去に死んで、新しく生きるという事はほとんどの人間が意味も知らないまま、死んで行くので、こういう映画の価値が評価できる場所がカンヌにあって良かった。w

最後のぶっ放しは、ジョーの涙と共に起こされた変化。本人にも自覚がないとも思わせるほど。決心にはあまり見えなかったけど、少女もトイレで自分をかき切ったかも。w
これで二人は過去「だけ」で生きる所から解放されて普通の会話を手に入れた。幸あれとしか言い様がない。

あなたは本当にここにいなかったというのは、あなたのせいじゃない、あなたの責任じゃないと同義。自己責任常識化と安直な思いやり運動の幼稚さに、強烈なハンマーを投じる。
ホアキンの名演は勿論、考える事でしか何も成長がない事を映画に託すスタンスが見事。訳の分からない作品もあるけれど、その中で考えれば分かる作品は、少ない。
一度死んで新しく生きるを脚本化、映画化して、「本当の救い」に挑戦した事に拍手。日本では、まず生まれないだろうな。傑作というより一つの到達点。映画もここまで来ました。

ytoshik