劇場公開日 2018年3月1日

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「イーストウッドの、人間の生き様としての統一テーマ性は感じられるものの…」15時17分、パリ行き KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

1.0イーストウッドの、人間の生き様としての統一テーマ性は感じられるものの…

2022年7月23日
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クリント・イーストウッド作品としては
「荒野の用心棒」や「ダーティ・ハリー」等の
俳優としてのたくさんの映画はもとより、
監督ものとしても約20作品で
楽しまさせて頂いたが、
この作品もキネマ旬報第6位(読者選出共)
との高評価もあってレンタルして初鑑賞。

しかし、イーストウッド映画としては
残念な印象だった。

鑑賞前は、本人役を演じたという3人が
犯人と乗り合わせた列車での英雄譚を
じっくりと描いた話かと思ったが、
冒頭のかなりの時間を割いて
少年期と軍隊での訓練シーンが長く続き、
でもまあ軍隊での訓練が
犯人逮捕に活きるのだろうと想像しつつも、
いつ事件そのものが始まるのだろうと
我慢しながら更に鑑賞を続けた。
しかし、中盤になると今度は長々と
観光映画を見せられた気分にさせられ、
気持ちが萎えてしまった。

何故この内容でキネマ旬報第6位の
高評価なのか、全く理解に苦しむ。

この年は、
米国社会の病巣とそこからの脱却への期待を
見事に描いた「スリー・ビルボード」や
「ペンタゴン・ペーパーズ」等の名作が
公開された年だが、
私の感覚では、後年の記憶に残るような
作品が多くはなかったような気がする。
想像するに、絶対的な価値ではなく
相対的な判定の結果、本来の評価以上に
繰り上がったと理解しないと、
私にとっては
キネマ旬報ベストテンへの信頼性が
揺らいでしまい兼ねない順位だった。

あるいはクリント・イーストウッド神話が
専門家の判定までもそうさせたのか、とも。

また事前に、ラストに驚きのシーンがあると
知らされていたが、
まさか当時の本当のオランド大統領が
出演してくるとは驚いた。
これもイーストウッドの成せる技
なのだろうか。

彼の作品は、人間の生き様としての
統一テーマ性は常に感じるが、
ジャンルや時代性にはかなりの幅があり、
彼の懐の深さを再認識はさせられた。
この作品も社会的な意義はあるのだろう。

しかし、この映画では、
そもそもが描くべき事件そのものと、
3人の性格描写のための子供時代・軍隊時代・
旅行の各エピソードとの時間配分は
逆だろうと思うし、
結果、長過ぎない上映時間にしては
無駄なシーンも多く感じられ、
作品としてのレベルとしては
大いに疑問を感じさせられるばかりだった。

KENZO一級建築士事務所