「見るべき作品」億男 R41さんの映画レビュー(感想・評価)
見るべき作品
作品名から勝手な妄想をして今まで見ないでいた。
出会いはいつもあるが、それを出会いとみなさなければいつまで経っても出会ってないのと同じだ。
つまり私にもようやくこの作品を見ていいタイミングが来たと感じた。
映画の感想は面白いもので、作中九十九が話していた「お金の価値は人によって違う」のと同様、人によって大きく違う。特にこの作品はそう感じた。
一男は視聴者だ。誰もが思うごく一般的な人だ。視聴者は彼と一緒になってお金を持ち逃げした九十九を追いかける。
親友だと思っていた九十九がなぜ私のお金を持ち逃げしたのか探し始める。一男と一緒に考え始めるのだ。
あのお金があれば借金を返し、家族とまた一緒に暮らせる。人生を変えられる。誰もがそう思うし、そう思わない人を知らないほどだ。
パーティで出会ったあきらは、偶発的にLINEを繋げたのではなく、金づるを探している女だ。または、彼女にそう仕向けたのは九十九だったのかもしれない。エライザちゃんはいい俳優になっている。
彼女を頼り、九十九を知る連中から彼の行方を探し始める。
それは当時のバイセルの役員たちだ。彼らは株主で、そしてバイセルを200億で売却することを決定した。
九十九は言う「彼らは変わってしまった」
エリカ様は女友達に言われた。「10億手にしたのはズルい」
そしていう。「男は市場でものを買うように女に値段をつける。女も男がつけた条件をイメージして、そして落ちてゆく」
一男に尋ねる。「3億戻ってきたら何に使うの?」 「その使い方を考えています」
「バイカルで追いかけていた夢は、お金では買えない」一男が垣間見た真実だ。口先では幸せを話すエリカ様のバイタリティーに差を感じたのだ。
九十九は一男と一緒に行ったモロッコ旅行で、バイセルの基本概念を思いつく。
起業を決める。お金の価値が人によって違うというということを発見した。
それを一男に話したものの、当時の一男にはチンプンカンプンだった。
「この世に絶対的なものなどない」「お金の正体を知りたい」「でも僕は僕だ。僕は変わらない」
一男の妻は言う「あなたはお金が体に染みついて、生きる欲を失ってしまった」
娘のバレエ発表会 その前に妻に渡した離婚届 自分らしさを全面的に表現する娘の演技に涙がこぼれてきた。
欲しいものはすべてお金では買えないものばかりだということに気づいたのだ。
そこに値段はつかない。自分だけの大きな価値だ。そこにお金の概念は存在しない。
九十九は、お金が人を変えてしまうことを知っていた。あのパーティで集まった人々は、お金によって変わってしまった人々だ。
酔いつぶれた一男もその仲間入りになった気分だった。
一男が九十九に話した「借金を返し残ったお金の使い方を知りたい。もうお金で失敗したくない」 この言葉が九十九を動かした。本気で一男にお金の正体を教えることに決めたのだ。
競馬場にいた百瀬も面白いことをした。100万で万馬券を買って1億当てた。それをつぎ込んで0円になった。実は馬券は一枚も買ってない。
「お金とは頭の中で行ったり来たりしているだけ。お金で家族が戻るなんて幻想だ」
さて、
電車の中で九十九は一男に3億返して言った。「このお金、今の君にはどう見える?」
これは視聴者に質問している。
一男は「まったく別物に見える」と話した。
「あの時すべて解決すると思っていた。でも本当に欲しいものは取り戻せなかった」
「お金の正体は見つかったのか?」
「バイカルのメンバーはすっかり変わってしまった。お金は人を変えてしまう。お金の正体に近づくほど大切なものを失ってゆく」
「変わらないんだお金は。使う人が重くもするし軽くもする」
私は、
自分にとって今あるものがいかに大切なものかを理解したうえで、必要なものに必要な分だけお金を使うことが、今の私自身が私らしく居られることなのかなと思った。
それがこの作品が伝えたかったことだろう。
それがわかった一男は、今娘が欲しいと思っている自転車を買ったのだ。
妻は彼らしさを取り戻してきた彼の手紙を読んで、それを快く受け取ったのだろう。
現実はお金では変えられない。現実を変えるのは、そう思い込んでいる自分自身の思考をかえることなのだ。
これは最高の作品だった。