「こンッな紙切れェェィ!!」億男 KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
こンッな紙切れェェィ!!
お金で買えない幸せ、夢、家族、友達。
耳にタコができるほどよく聞くフレーズ。
この話を「普通の人」よりも遥かに多くのお金を稼いでいるであろう豪華俳優陣が演じることに小さな皮肉を感じる。
「もし宝クジで高額当選したら…」
きっと誰もが想像したことがあるんじゃないか。
まず欲しかったアレを買って、家を買って、生活のグレードを上げて?そんなにいっぺんに手に入れたら人格が変わりそうだから、とりあえず必要なことに使って残りは貯金?
どうしてもなんだか上手くいかなさそうで、私はいつも途中で想像を放棄してしまう。
だけど現実になってしまったら。
3億という間違いなく大金だけど一生かかっても使い切れないほどの壮大さの無い、尽きも見える金額をポンと手にしてしまうのはなかなか怖く感じる。
一男を通して高額当選のケースをシミュレーションをしているような気持ちになる映画だった。
3億円と共に消えた九十九を探すために百瀬、千住、十和子の3人を渡り歩く様子が面白い。
百瀬との桁違いな競馬、千住の胡散臭すぎるパフォーマンス、十和子の質素な部屋から溢れる札束、どれも非現実的だけど観ているだけでトランス状態になってゾワゾワしてきた。
強調した例とはいえ現実にもこんな世界がどこかにあるんだろうな…すごいな。
別世界を覗いているようでドキドキするし、一男がナヨナヨしているのでどこかスリリングで神経を使う。
そういえばほとんどの登場人物の名前に数字が入っている。
九十九以外は一、十、百、千、万、全部お金の位の数字が。
「万佐子」って変な漢字使うなあと思っていたらそういうことか。遊び心効いてて面白い。
テンションの高い演出と濃いキャラ付けがよく似合っていた。
普遍的なテーマを極端に広げて最後は小さくまとめてくれるのでかなり分かりやすい。
お金に対しても人生に対しても人間関係に対しても確かな答えなど無いのがリアル。
この作品を富豪が観たらどう思うのだろうかすごく気になる。
お金は有っても無くてもそれに囚われてしまう。
どれだけ綺麗事を並べようと現実的にお金がないと生きていくことは難しく、たくさんあるに越したことはないと思う。
自分にとって価値のあるものに対価を支払い、満足できる生活が送れたらいい。
もし今後、宝クジで高額当選したらもう一度この映画を観ようかなと思う。
思ったよりモロッコ旅行のシーンがかなり多く、エンドロールでもずっと旅行時の映像や写真が流れていた。
一男と九十九の価値観をあぶり出し、二人の関係にとって大事な象徴的なシーンや場所だというのは分かっている。
しかし、「せっかくモロッコまで行って撮影したし沢山使ってその元を取りたい!」という製作側のセコい意図なんじゃないかとチラッと思ってしまうのは私が穿ち過ぎ、それこそ金に囚われているからなのだろうか。
綺麗だったから全然良いのだけど。モロッコ行きたい。
こんッな紙切れェェ!!こンンッッッな紙切れェェェェェィィ!!
絶対に叶いまァす…!ぜッッたいにィ、叶いまァァァァスッッ!!!!
声に出して使っていきたい。