「雪原で静かに飛び散る悲しみの血」ミスミソウ 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
雪原で静かに飛び散る悲しみの血
レビュー200本目。
最近1番観たかった邦画。
野咲春花は東京から田舎に転校してきたが、学校で陰湿ないじめに遭い、ついには家族を焼き殺される。
感情を抑えられなくなった春花は復讐を開始する。
終始重い雰囲気が漂い、それだけでもこちらが病みそうになる暗い映像。
そうかと思えば、キラキラとした過去がチラッと映ったり。
そして、なによりもこの映画の象徴的な、血の赤と雪の白のコントラスト。
不謹慎ではありますが、これは映画というより芸術。
血がこんなに映える映画はなかなかないかと。
雪がスイッチかのように、雪が降り出した時から彼女の復讐が始まる。
いじめっ子、自分の両親を殺した奴らをバッタバッタと切り刻んでゆく。
私利私欲にまみれ、自分の保身に走るいじめっ子たち。
雪がしんしんと降る中、聞こえるのは悲鳴とグサっ、グチョっと春花が命を絶つ音だけ。
スプラッター映画ですが、変な効果音や音楽で誤魔化はないところが良かったです。
確かに描写はエグかったですが、グロ耐性がついてきたのか、思ったほど引きずることもなく。
内藤瑛亮さんらしいところもありました。
もちろん原作マンガありきの話だとは思いますが。
いじめは繰り返される。
流美も女教師も自分がいじめを受けたからあんな風になってしまったわけだし、復讐のような悲しい結末を生むこととなってしまう。
いじめという負のスパイラル。
また、これを観て(自分もそうですが)、いじめっ子への復讐を気持ち良いと感じてしまったり、「春花やれやれー!いけいけー!」と心の底で思ってしまう。
この点でもう傍観者だと、考えれば考えるほど自分が嫌になってくる。
そういう、普段気づかない秘めたる狂気を炙り出してくれるのが、流石だと感じました。
自分もこのいじめに加担してしまうかもしれないと思うと、正直現実的には思えないこの物語もやけに現実味を帯びてくるんです。
あの怒涛のクライマックスで、タテタカコさんの『道程』が流れた瞬間、胸が急に苦しくなりました。
何席も空いた卒業式。窓の外を眺める妙子の表情。
死んでいったいじめっ子たちにも、色々なバックグラウンドがあったと考えると、あんなに嫌だったのに、と急にものすごい喪失感に襲われました。
このシーンだけで星一個分加点です。
血塗れでも山田杏奈さんは美しかったし、清水尋也さんのサイコパス感もたまらなかった。
最近よく見かける中田青渚さんは嫌いになりそうなほどで、今回初めて知った大谷凛香さんや大塚れなさんなど脇の役者さんも名演でした。
片岡礼子さんにはそろそろ幸せな役やってほしかったりも笑笑
ただのグロ映画ではなく、熱量のある芸術映画でした。
原作マンガも読まなくては!