「ただの青春ものではない。10代の葛藤を描いた人間ドラマである。」志乃ちゃんは自分の名前が言えない キッスィさんの映画レビュー(感想・評価)
ただの青春ものではない。10代の葛藤を描いた人間ドラマである。
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歌は上手いが吃音で悩む志乃。
ギターは弾けるが音痴で悩む加代。
中学時代いじめにあい空回りする明るさを振りまく強。
志乃と加代が「しのかよ」のヂュオを結成し、ストリートで度胸試しをしているところに強が通りがかり、居場所を求めていた強が無理やり加入してくる。
志乃はよほど心を許さないと緊張で吃音が激しくなる傾向があるので、強の加入を快く思わない。
そのまま学園祭になり、加代だけがバンドコンテストにソロ出演。
私は軽い吃音がある。これは同じ悩みを持った人でないとその苦しみは分からないだろう。
電話をするとき、大人数の前で話すとき、言い換えができない固定された言葉を発しないといけないとき。それはそれは深呼吸では乗り越えられないほどの緊張感がある。
何か言いやすい言葉への変換、勢いで続きで発する、などのことをしていかないといけないという追い込みがさらに緊張感を増していく。
作品を見ながら痛いほどその思いが伝わってくる。志乃の吃音の演技に関して、苦しむ人に対して差別的だと非難する人もいるだろう。でも、それを分かってもらわないと隣の人がそれに苦しんでいるかもしれない、他のことで悩んでいるかもしれない、ということにも気づけないだろう。
それをNHK的な表現ではなく、文学作品的な表現で知ってもらえるなら自然に受け入れてもらえるかもしれない。
有名な俳優さんが出ているものがいい作品ではない。それぞれの心へ印象付けることができるものがいい作品である。
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