「リアル」フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法 aMacleanさんの映画レビュー(感想・評価)
リアル
フロリダのディズニーワールドに近い安モーテル、マジックキャッスルで暮らす、シングルマザーと娘の話。すこぶる貧しいのだが、最低限の暮らしはできている。
娘のムーニー役の子が、めちゃくちゃ可愛い。映画の大半がムーニーとその友達スクーティ、ジャンシーが無邪気に遊んでいるシーンだ。ほぼ、子供の目線の少し下から撮られており、それが違和感なく観れるところが素晴らしい。
フロリダの底抜けに明るい陽光の下、貧しさに憂うこともなく、幼い3人は全てを楽しんで、遊びに変えている。
観光客からせびった小銭でアイスを買い、それを分け合って食べるといったことを、とても自然に、楽しそうにやっている。ムーニーの可愛い笑顔から、どぎつい悪態が出るので、最初はちょっと引くが、すぐに慣れて彼らの日常に入り込んだ感覚になる。
母親ヘイリー役のブリア・ヴィネイトは、映画初演と思えないほど堂々としていた。
ギリギリの生活の中でも悲愴感は無く、親子の生活を維持するためになんとかその日を楽しくしのいでいる。子供にやつあたりすることは決して無く、まるで友達のように同じ目線で接して、常にムーニーの味方でいる。教育としては最低だが、子供としては最高の親だろう。
しかし、現実は厳しい。最低限の生活は、少し歯車が狂うと、すぐに破綻する。ムーニー達が起こしたある事件から、全てがおかしくなりはじめる。しかも、その事をヘイリーは知らず、イライラしたヘイリーは過激な行動に出てしまい、それがさらに孤立を招く。そして、怒涛のラストへ。
一般的には、「夢の国のすぐ近くで、貧困故に起こった悲劇」といった内容なのだろうが、子供達を見ていると、そこはそこで「毎日が楽しすぎる夢の国」だ。それすら維持できない社会。資本主義の限界を露呈させている映画というのは、飛躍しすぎだろうか。
そして子供達は、世の中のしがらみに囚われず、本当のマジックキャッスルへひた走るのだ。