「キノコパワー」ファントム・スレッド kkmxさんの映画レビュー(感想・評価)
キノコパワー
かなり面白いブラックコメディ映画でした。
前半は高尚な雰囲気と主人公カップル2人の息詰まる空気感から、展開が読めず緊張を強いられましたが、後半は爆笑に次ぐ爆笑でした。観終わってからは、映画全体を支配する格調高さやダニエル・デイ=ルイスの重厚な演技すらギャグだったのでは、なんて感じています。ゴージャスでスケールがデカそうな風情のクセに描かれている物語はヨタ話のたぐいという、そのギャップも可笑しかったです。
見方によれば、母のファントムに囚われた男と、新たなファントムとして男を支配する女の哀しい物語とも言えそうですが、やはり語り口が面白すぎて、シリアスな話として捉えることは不可能でした。
やはり、キノコの破壊力が強烈すぎます!だってキノコだよ…そのスケールの小ささたるや。しかも、キノコ事件の後の超絶展開には本当に仰天、大爆笑でした。キノコパワーすごいぜ!
そして、クライマックスのオムレツ…ダニエル、アンタ最終作があんな面白演技でいいのか!と突っ込みたくなる顔芸が炸裂。食べる?食べない?いや食べる?あ…食べたけど〜、飲み込む?飲み込まない?のくだりは完全なるコント。ここは本当に面白かったです。バーフバリのエンディングに匹敵するほど笑えました。本当にキノコのインパクトが強すぎる。困ったときのキノコパワー。最終的には呪いとかどうでもよくなってしまった。
この辺りの描写から鑑みるに、PTAもギャグ映画として撮っていたのだと思います。実際、物語として描かれているのは単なるバカ2人の共依存ですからね。シリアスな話よりも、ギャグ向けの題材だと思います。
アルマのキャラクターは実にキてますね。キノコ事件に至る寂しさやもどかしさは理解できますが、やってることの程度の低さがどうしても滑稽に感じます。なんだかんだと有名人の愛人ポジションを捨てられないんでしょうね。ある意味、レイノルズに寄生するしかないわけですから。
あと、お姉さんが後半空気なのは残念。彼女がウッドコック家の呪いとして機能するのか、と思いきや、前述したように呪いとかどうでもよくなったため、姉もどうでもいいキャラになってしまったように感じます。
(後述…別の方のレビューで、アルマによって姉の呪いが解けた、という解釈があり、現在はその通り!と感じています。空気になったというよりも、ウッドコック家の呪いが解けて、空気になれた=家とは関係ない人生を送る可能性が生まれた、と言えます。その意味では、アルマいい仕事しました)
綺麗なモリッシーことダニエル・デイ=ルイスは、履いていたボルドーの靴下がとても素敵でした。
まったく本作は、史上最高のキノコ映画だと思いました。キノコパワー!(キノコパワー!)遠く高く放り投げてっくれッッ!