「モンキーマン、やり過ぎ!」ザ・スクエア 思いやりの聖域 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
モンキーマン、やり過ぎ!
スマホと財布とカフスボタンを盗まれたクリスティアン。その序盤のシーンからして、「助けて」と叫ぶ声が聞こえ、一人の女が近寄ってくるというシークエンス。現金を持たない主義のクリスティアンだから、カードは即無効にするとか、普通の対策を練ればよかったのに、GPSで特定できたアパートの全ての部屋に脅迫状を送るという手段を取った。
「スクエアの中では皆平等に権利と義務を持つ」などというテーマを前面に押し出してるにも関わらず、不条理な出来事と権力を持ったことによる矛盾が表面化している。各エピソードの合間には必ずと言っていいくらいに物乞いの姿が登場するが、慈善の心を持っているのにキャッシュレス時代を象徴するかのように小銭がない。通行人の誰もが恵もうとしないのだ。
偽善者と呼ばれてもおかしくない窮地に追い込まれたのは、部下の二人がYouTubeに動画を投稿したことがきっかけだった。美術館を宣伝するためにスクエアの中に物乞いの金髪少女を立たせるまでは良かったが、最後に爆発させるという酷いシロモノ。弱者をいたわるつもりが、弱者を排除するかのような動画はあっという間に30万回再生を超えてしまう。
財布とスマホはコンビニに届けられ、無事に戻ってきたはいいけど、親に泥棒扱いされて怒ってる少年が登場。その対処法にも思いやりが感じられず、精神的にも追いつめられるクリスティアン。
スウェーデンを中心に北欧の国々は社会保障や福祉は充実しているものの、その財源のための税金が高い。老人になれば平等といったイメージがあるけれど、それまでの現役世代にはやっぱり恐ろしいほどの貧富の格差があるのだろう。金だけじゃ解決できない思いやりも、目に見えない力によって均等化に向かわない。結局は権力者の傲慢さが生み出した社会矛盾なのだろうと感じた。
きのう
スウェーデンのアンデション首相が辞任を表面ましたねー
総選挙で野党=移民排斥の極右政党が台頭。
開放政策から一転して国内優先の閉鎖政治に舵を切っていくスウェーデン。このニュースを見て、この映画の「スクエア」のことを思い出していました。
スウェーデンは移民たちの母語継承を国費でサポートしています。
入国した女の子とお母さん2人。この女の子のために言語教師を探したがスウェーデン国内には教えられる人材がいない少数言語民族であることが判明して、
(さあスウェーデン政府はどうしたか?)
政府は、なんとお母さんを公費で教師として雇ったのだそうです。
こういった“贅沢”も今後否決・廃止されていくんだろうなぁ。
あの国も悩んでますね・・
>…必ずと言っていいくらいに物乞いの姿が登場するが…
たしかに。そういう皮肉表現だったんですね。さすがkossyさん、ありがとうございます!
やっぱり、きっと深い映画なんだろうな、と思い直しました。