「二度と見たくないけど、もう一度見たい映画」ザ・スクエア 思いやりの聖域 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
二度と見たくないけど、もう一度見たい映画
とにかく不可解で難解で後味の悪い映画。全編に亘って居心地が悪くて、ちょうど不愉快(変な言葉だけど、しっくりきたから直さない)。誰もが絶対に持っているはずの偽善とか不寛容や不平等さや矛盾などを、人が不快感を覚えるポイントを絶妙に突っつきながら厭らしく露見させてくるこの感じ。全てのシーンがまるで観ている者の良心やモラルを問う試験みたいな感じでとても胸糞悪い。しかも登場人物は別に嫌な人たちというわけでは決してなくて、其処彼処にいるごく普通の善良な市民であるというのがね。ますます後味悪いです(って、散々貶しているみたいだけど、この映画にとっては全部褒め言葉みたいなもの。私自身、褒めてるんだか貶してるんだか分からないまま書いてます)。
やっぱりそれが特に顕著なのがモンキーマンのシーンだったかなと思う。あのシーンの緊張感たるや凄まじかった。自分もあのテーブルで席についているような感覚だった。彼らが俯いて存在を消して一刻も早く時が流れ去ってくれるのをひたすら待ち続けているようなあの気持ちが良く分かったし、自分があの場にいても、絶対に何も出来ない自信があった。制止することも救助することも逃走することもできずに、あそこにいた多くの人がそうしたように何も見ない何も聞かない何にも気づかないという演技をしただろうと思う。
ただすべてのシーンや、すべてのエピソードについてきちんと解釈が取れたわけではなく、本当にただただ意味が分からずに終わったようなシーンも少なくはなかったし、この映画が面白かったか?って聞かれてしまったら絶対に面白くはなかったと答える。上映時間も長いし、体力的にも精神的にもすごく疲れた。映画を見ている間、早く映画が終わってほしいと思ったし、二度とこの映画を見たくないと思った。でも映画を見終わった後で、なんだかもう一回見直したい気持ちにもなった。なんだかもうよく分からない。
それに、この映画が見せたものって、謂わば人間の「人間らしさ」であって、それは不完全さであって醜悪さではないし、それを今更暴いたところで一体何になるんだろう?という風にも思ってしまった。人間が厭らしい生き物だってことくらいとっくに知っているよ、と開き直りたい気分だったし、それも含めて人間らしくていいじゃないか、と自己弁護したい気分だった。