「コンセプトアートならぬコンセプトムーヴィか」ザ・スクエア 思いやりの聖域 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
コンセプトアートならぬコンセプトムーヴィか
前作『フレンチアルプスで起きたこと』は権威失墜型コメディとでも呼べばいいのかしらん?と首を傾げたくなる笑うに笑えないコメディだったが・・・
同じリューベン・オストルンド監督のカンヌ国際映画祭パルムドール受賞作品。
スウェーデンの王宮の一部を改築した美術館エックス・ロイヤル美術館。
扱うのは現代アート。
その首席学芸員クリスティアン(クレス・バング)計画しているのは、「ザ・スクエア」という企画。
4メートル四方の四角い空間の中では、だれもがだれもを信頼し、思いやらねばならない、というもの。
そんなある日、クリスティアンは助けて詐欺に引っかかって、スマホと財布を盗まれてしまう。
幸い、スマホにはGPS機能があるので、どこにあるかはわかったが、そこは低収入者向けのアパート。
だれが犯人かわからない彼は、部下とともに、各戸に「スマホと財布を返せ、さもなくば・・・」という脅迫文を入れていく・・・
といったところから始まる物語。
ちょっと面白そうな題材なのだけれど、主人公がとる行動と同じく、映画全体の考えが浅い。
なんだか、一場面一場面を繋いだコントみたい。
いや、コントならば、それはそれでいいんだけれど、あまり動かないカメラの外側から不穏な雑音が鳴り響いたり、ぶった切ったようにカットが繋がったり、となんだか格好つけすぎで、かえってそれが映画としての恰好悪いことになっているような感じ。
映画はこの後、「ザ・スクエア」企画のトンデモPR動画がWEB上にアップされ、大炎上。
さらには、現在開催中の企画展のレセプションに、猿人が乱入して混乱するという、アートパフォーマンスが予想外の方向に大暴走して・・・と展開するのだけれど、いずれも場面場面のお団子串刺し演出で、ひとつひとつは面白いが(とはいえ、笑うに笑えないのだが)映画としてのドライブ感が欠如。
観ている方としては、ひたすら疲弊するばかり。
オチの付け方としても、少しばかりの信頼と思いやりを感じた主人公が、自身の脅迫行為の後始末をしようとするが、結果、覆水盆に返らず、信頼も思いやりも届きはしないという皮肉な結末となるのだが、その空しさも、なんだかなぁ、取って付けたよう。
個人的な好みとしては、この手の皮肉な映画は、もう少しテンポよくドライに進んだほうが効果的だと思うのだけれど、これではコンセプトアートならぬコンセプトムーヴィではありますまいか。
とにかく、長い、シーンシーンが無駄に長い。