「海の向こうの富裕層の黄昏」ゲティ家の身代金 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
海の向こうの富裕層の黄昏
この話を何故にリドリー・スコットが手懸けたがっていたのか、小一時間位問い詰めたい程の、題材である。もしかしたら、ジャンポールゲティ役のケヴィン・スペイシーありきの作品だったのであろうか。それ程、この偏屈ジジイの役は、キャラが濃い人物である。所謂金持ち偏屈爺さんとしてのプロファイリングのベースとなっているこの実在の人物と、その孫の誘拐事件実話ベースに、フィクションのエッセンスを蒔いたようなストーリーである。活躍するのは母親と、たまたま巻き込まれた様な形の爺さんのボディガード。そして、誘拐側の一味の一人。実際に起こった事なので、実はこういう内幕だったという匂いを撒き散らしたような展開である。勿論、色々な解釈があるし、あくまでもイマジネーションの域を出ないので、ハッキリとは演出していない。解釈というか、ネタバレを醸し出すシーンはあっても、しかしそのどれも決定打としては程々遠い。要は、この事件、母親と子供の命をかけた狂言をやり遂げた壮大な復讐劇、若しくは一発逆転劇としての側面を表わしているストーリーなのであろう。勿論、そんな都合良く事が運ぶなんて、漫画じゃあるまいし、全くの絵空事と捉えるのも有りである。というか、その曖昧な伸びシロを観客に提示して、風呂敷を拡げてこの物語は終わるのである。wikiで調べたら、その後の孫の悲惨な人生も又、この作品を益々不可解な世界へと彩るスパイスになっている。余談だが、テレビ等で使われる写真素材の管理会社であるゲティイメージの創設者はこの孫の弟だそうだ。そういえばイタリアマスコミのパパラッチ振りが今作品の時代背景を表現しているが、それと関係があるのだろうか、そういうのも愉しむ素材になっている。
結局、この石油王は、人徳の無さ故に、継いでくれる子孫にも恵まれず、会社は売却されたようだが、こういうステレオタイプな話は、その後のパターンとしてのドラマツルギーとして脈々と続いていくのだろうね。返す返すも、ケヴィン・スペイシー版の本作を観たかった次第である。 そういえば、『ミノタウロス』の話もなにかメタファが挟まっているのかな?