「西とか東とか関係ない/愛さなければ愛されない」ラブレス だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
西とか東とか関係ない/愛さなければ愛されない
初ロシア映画。「裁かれるは善人のみ」とか「エレナの祈り」とか観たかったけど見れてなかった監督の作品。
ほっこりとかうっとりとかはないけど、鋭くて冷徹な怒りが満ちていて、観て良かったです。
ジェーニャがデートしてたレストランで赤いドレスの女の子に声をかけて電話番号を聞いた人はだれなんですかね?ソムリエ?本筋にはあんまり関係ないけど気になって仕方ない。
タイトル通り愛がない夫婦の話です。
両親の罵り合いを聞いてしまい、両親ともに自分を引き取りたがっていないことを知って、声を殺してなく息子ちゃんがかわいそうでかわいそうで。
君が両親を殺したってあたしは許す!!!と思いました。
息子は親を殺すという野蛮な行動には出ず、自発的に失踪します。
そのことが親へのパニッシュメントになると踏んでのことか、まではわかりませんが、結果的にくそ親への罰にはなりました。
父親も母親もどっちもどっちな感じで、まあ、子供にねちょねちょ依存するよりいいのか?とか思いましたが、12歳だったら多少依存的だったり支配的だったりしても、親がどっちかでもいるってほうがあたしはうれしいかもなっておもいます。
まあ、大学費用までふんだくったらこっちから捨てますけどね。
しいて言うならば、自分の欲望に正直であることは評価できなくもないけれど、
にしたって大人が子供にすることじゃない。
警察は冷たくて、慣れた感じのボランティアの捜索隊がテキパキと捜索するも、見つからないのです。
探しても探しても、12歳の子が見つからない。
季節は冬へと進み、ロシアの雪の季節の過酷さも想像される。
特段ビビらせる映像はないですが、破綻した夫婦の醜悪さと、息子の声なき怒りみたいものを勝手に感じて、身が縮むような、体の先っちょが痛いような恐ろしさを感じました。
息子失踪からおよそ2年、夫は不倫相手と暮らしていて子供がいるけれど、全然子供を可愛がらない。
妻も不倫相手と暮らしているが、以前のような一生に一度の恋満喫中っていう万能感はなさそう。SNSをチェックして、美貌を保つために寒空の下、ルームランナーで走る。相手との愛はLESSに見える。
腐ったつがいは新たなつがいでも腐らすんだねーなんていう皮肉を思いました。
息子が、どこかでいきていてくれるといいな。
そして、ウクライナ侵攻のニュースが映画内で映っていましたが、主人公たちは至って無視。
自国がやってることだとしても、自分に遠い(と思える)ことは簡単に背景にできる。
自分にもあるその残酷な性質にギクッとしました。
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アンナカレーニナや戦争と平和とかの戯曲?や小説の、アメリカとかイギリスとかの映画・ドラマ版で見たことはあります。
後は、スターリンの葬送狂騒曲とかスターリングラードとかチャイルド44とかね。どれも西側諸国産。
要は、西側のバイアスがかかったソビエト連邦・ロシアってものを、ちょこっとだけかじっていたってことです。
その前提で「LOVELESS」を見ると、描かれる人間は西とか東とか全然関係なくって、あそこにもここにもいるじゃんっておもいました。ロシア人って、みたいなことは全然思わない。
そっかそうだよなっていう、納得がありました。