劇場公開日 2018年5月4日

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「バイオグラフィー」アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル Editing Tell Usさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0バイオグラフィー

2018年12月25日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

予告編も見ずにポスターの見た目から、Disney製作のシンデレラストーリーなのかと観る前は思っていました。180度裏切られて、逆によかったです。シンデレラストーリーとは真逆の”Raging Bull”のようなスポーツ選手として落ちぶれていく姿を描いた作品には、劇中でもなんども裏切られました。

脚本でどこまで構成が作られていたのか、編集の力でこの構成が出来上がったのかはわかりませんが、2時間の1つのストーリーテリングとして、1人のフィギュアスケーターの反省の描き方にはとても楽しむことができました。

ジェットコースター
映画を見ていても、観る前に思った一般的なヒーローズジャーニーなんじゃないかと思っていました。それほどにアクトの数がとても多かったです。それゆえ、トーニャの感情に沿ったストーリー展開はまるでジェットコースターのようにアップダウンを何度も繰り返します。最初の1時間だけ見ると、子供用のアニメーションのようなシンプルなヒーローズジャーニーなんですが、そこから、トーニャの思い通りにことがいかず、全ての手が悪い方向へと転げ落ちていく様子はテトリスで負けが近づいてきて、どんどん目の前が塞がれていくような感覚でした。その後半に感情を動かされたのも、前半で一見逆境に負けず立ち向かっていったように見える行動が小さな種となっていたから。母からの暴力を受け続け、若くして一度は全米の頂点に輝くも、小さな頃から刻み込まれた無数の傷は癒す方法を間違ってしまったがゆえに、どんどん傷が深くなっていく一方。劇中にとーにゃがインタビューで何度も繰り返すセリフ”This is my fault, but that was not my fault”的な発言。傷のなすりつけあいは、傷ついている側は気づかないものである。

インタビュー
2.39:1のワイドスクリーンで撮影された本作ですが、劇中で何度も出てくるインタビューのシーンは、4:3にクロップされている。それは、実際に行われたインタビューなので、昔のテレビで見ているような感覚にさせる効果だけじゃなく、被写体を中心に置き、シンメトリーなフレーミングでポートレートのような構図にすることで、キャラクターたちの孤独感、言っている言葉の相違のようなものを表現している。さらに、それをストーリーテリングに杭を打つように配置することで、インタビュー当時のキャラクターの感情を少しずつ紐解いていくような謎解き要素にもなっている。インタビューを並列に2つ並べられた時には、「やられた」と思いました。この瞬間ストーリーがサッドエンドだと気付かされ、そこからはトーニャが堕落していく様を見ている、一視聴者になっていました。

アリソン・ジャネイが物凄くよかった。

Editing Tell Us