「ポケモン映画ではなく映画として」劇場版ポケットモンスター みんなの物語 クロクヌレさんの映画レビュー(感想・評価)
ポケモン映画ではなく映画として
前作で一区切りとなったポケモン映画。
今作においてこれまでは「ポケモン映画」から脱却し「映画」としてリスタートを切ったと言っていいだろう。
まずはこの勇気ある決断をとった監督をはじめとする制作スタッフ、スポンサーの方々に敬意を表したい。
幕が開き物語が進むにつれて、一体何が起こっているのか理解することができなかった。
なぜならポケモンという強力なキャラクターに頼り、独りよがりともいえる観念的な映画ばかりだったこのシリーズが、あまりに映画的な脚本のうえで進行していったからだ。
私は鑑賞中にロバート・アルトマンの名を思い起こしたことを否定しない。
スクリーンではよくできたオーソドックスな群像劇が奇妙なキャラクターをパートナーとして展開されていた。
そして物語終盤、私は理解する。
前作までは「ポケモンを産みの親たち」の作品であり、今作は「ポケモンに育てられた子どもたち」の作品であることを。
彼らはポケモンを商業的な映画のなかで消費することはなく、ひとつの文化、いやパートナーとして映画のなかで表現したのだ。
私は映画の内容はもとより、その姿勢に感動し涙を止めることをができなかった。
想像するに非常に厳しい環境のなかでの制作だったのではないだろうか。
そのプレッシャーのなかでこのような映画を作り上げたことを誇って欲しい。
そしてこの気概が三年、五年と続いていったとき、世界はもう一度ポケモンを映画のなかで発見することになるだろう。
最後にその他レビューを
・作画が貧弱でアニメーションの醍醐味が気迫。
そのためか演出が弱く感じた。
制作費の問題かもしれないが、この点は過去の作品のよい部分を取り込んで欲しいと思う。
・声優陣はどなたも素晴らしかった。
ゲスト声優もなくリズムが崩れることもなかった。
これからも映画である以上、この体制で望んでほしい。
・エンディング曲もタイアップの取ってつけたような楽曲ではなく実力のあるバンドが映画を理解して作り出したもので好感がもてた。
以上です。
素晴らしい時間をありがとう。