「オススメです」クソ野郎と美しき世界 oxicvoeさんの映画レビュー(感想・評価)
オススメです
とても楽しい映画に仕上がっています。
難しいところはありませんが、ある程度の大人向けの映画ですので、賛否両論です。
ジャンルでいえば、ファンタジー系かなと思いますが、その実しっかりとしたテーマが全編に貫かれていて、心が動かされます。
メッセージ性はありますが、説教くさい映画ではありませんので、ご安心を。
エピソード1の園監督は、恋愛映画必須の、出会いや片思いや葛藤など、さらに言えば、共感できる人間性さえも、ものの見事に笑いに変えて、とにかく愛している人のもとに駆け付ける、愛してる人を求めるという、強烈なエネルギーを短い中にぶつけています。
その男気あふれる映像は、見る人の心に残ります。
エビソード2の山内監督は、園監督とは対照的に、丁寧にディテールを積み上げています。
歌を食べている少女、言い換えれば、本当は人から歌を奪うことはしたくはないけれど、歌を食べなければ生きていけない少女を、とてもセンチメンタルに描いています。
そのため、最初のシーンは、空腹に耐えかねて、都会のゴミ捨て場に座り込んでいるシーンから始まっています。
そんな彼女が、色の無い世界を、色や音楽であふれさせたいという衝動を、抑えきれない香取さん演じる香取さん?に出会い、物語は進んでいきます。
さらにユーモアも交えながら、娯楽作品にまで仕上げています。
エピソード3の太田監督は、私たち映画好きの代表のようです。
王道のロードムービーを、才気あふれるニヒルなセリフとユーモアで隠しながら、旅立たずにはいられなかった夫婦の思いを、丁寧に私たちに訴えかけます。
旅の終着点で見ることになる、救いのようなシーンは、まさに私たち視聴者と同じ目線を持っているからこそだと思いました。
エピソード4の児玉監督は、ここまでのエピソードで描かれたような、思い通りにいかない世界を生きている、そして、ここまでの悲劇にあう必然性など無かった「くそ野郎」な人たちを救い出して、新しい詩として賛歌しています。
ファンタジーだけど、リアルな世界観でつづられた本作は、そういう世の中を生きている人たちを描き出して、それを楽しいエンターテインメントにすることに成功しているのだと思います。