「ホラーでもSFでもない難解アート系か?」触手 mittyさんの映画レビュー(感想・評価)
ホラーでもSFでもない難解アート系か?
難解な映画。
パンフレットなどで解説をしっかり読みたくなる映画。
人寄せのためなのか。この「触手」という邦題、いかがなものか。そういう自分もジャケットからして、謎のモンスターがうごめくホラー映画だと思って観たのですが、これはB級のSFホラーではないでしょう。エンターテイメントとは無縁の映画です。
女主人公が2人いるようにも思える。冒頭、触手と交わっているヴェロニカ。一組の夫婦の妻アレハンドラ。夫は実弟ファビアンとの情事にふけり、アレハンドラは満たされずストレスを抱えて生活している。医師であるファビアンは、腹部を噛まれたヴェロニカを診察したことにより、2人は親しくなる。互いが抱えている問題を語り合う仲になる。ファビアンは「この世で一番美しい」というものをヴェロニカから教えてもらい、森の奥へ進んで行くが・・・、
という人間関係のドラマが静かな展開で続いていきます。
触手はほんの数分しか姿を現さないのですが、全体の映像は結構、ちゃんと作り込んでいるようで自然の描写は美しく、森に充満する霧の中にヴェロニカが入っていくシーンなど、不穏な空気が漂っていて、台詞ではなくて、映像で不気味な感じを見せてきます。
話の流れとしては、ヴェロニカが触手の次の生け贄としてファビアンを差し出したり、アレハンドラが傷を負う夫を触手の小屋へ連れて行ったり、ほぼ植物状態のファビアンの生命維持装置をアレハンドラが勝手に止めてしまったりと、人を死に追いやっているので、普通の倫理観では観ることのできないストーリーです。
結局、触手は何を意味しているのか?
悪なのか神なのか。快楽だけを与えて、欲に溺れた人間を破滅に向かわす、恐ろしい何か。
人間が持つ、やめられない「依存」がテーマなのか。
後半のアレハンドラとヴェロニカが触手について語り合うところが怖い
「あれが弟をやったんでしょ?」
「残念だけど。やりすぎることがあるの」
「ウソをついたのね。でもそれも分かるわ。
あまりの快感に怒りも憎しみも消えてしまうの」
隕石が墜落したクレーターのスポットに、動物たちが集まり、交尾をしている光景は異様ながらも見入ってしまいます。
触手はよく出来たビジュアルで、女性とからまるシーンは「これが快楽か」というほど絵になっていました。