「含みを持たせ過ぎてサプライズ感が削がれたのが残念」黒い箱のアリス よねさんの映画レビュー(感想・評価)
含みを持たせ過ぎてサプライズ感が削がれたのが残念
右手を失った少女アリスは父アダムと森の中にある家でひっそりと暮らしていた。アリスは不思議な女の子で、人間の言葉を発する装置を付けた犬ベアトリスを母と慕い、義手の訓練に飽きると外へ散歩に行く毎日。ある日アリスは森の中で奇妙な黒いキューブを発見する。彼女の気配に反応して起動したキューブに思わず手を突っ込むアリス。その手には紙切れが握られており、そこにはアリスの筆跡で『彼らを信頼するな」と書かれていた。同じ頃アダムは森の中で傷だらけの姉弟エリカとポールを見つけて自宅に連れて帰るが、その日から家の周りに不審な気配が近づいてくる。
冒頭から不穏な空気を帯びた映像で期待感を煽りまくりますが、これが実に残念な作り。極力セリフで語らない演出には好感を持てるのですが、それを活かすには演出が今一つ舌足らず。含みをもたせ過ぎたプロットが逆に最後の展開を想定内に抱え込んでしまい、あーそれね!と妙に納得してしまいました。そこは観客をミスリードするトラップを用意して欲しかった。スペイン映画なのにセリフが全部英語というのもちょっと物足りない。恐らくは『エクス・マキナ』的な雰囲気を狙ったのだと思いますが、ほとんど全編スタイリッシュなデザインの邸宅の中だけで展開、シンメトリーを強調した鋭利で冷たい映像は現代建築好きには眼福、そこだけは評価したいと思います。
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