キリング・グラウンドのレビュー・感想・評価
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時系列ずらし
エンドロールで「コンドルは飛んでいく」のギターソロが流れてホッとした。「またサイモンとガーファンクル?」などという娘エムに対して父親はクリスマスの曲をプレゼント。そっか、オーストラリアの年末は夏なんだぁ。そんな幸せな年末キャンプにも魔の手が忍び寄る・・・
一方、医者のイアンと婚約者のサマンサも同じ場所でキャンプするが、車もテントもあるのに人影がない。テントの中は何者かによって荒らされているのを発見し、助けを呼ぼうとするも携帯は圏外、自分たちの車もパンクしていてなすすべ無し。そこへムショ帰りのレイプ魔男チョークが登場し、前日もしくは前々日に殺した家族のことが気になってしまった。そして兄貴分のジャーマンも登場。時系列がずらしてあるので一瞬パラレルワールドかと思ってしまうほど不思議な感覚に陥りました。
残忍な男たちにも失笑してしまうレベルの行動があった。ジャーマンはすぐ猟銃を放ってしまうけど、命中率が低い。頭の悪いチョークは女のことしか考えてない。飼い犬バンジョーもどことなくオトボケ等々。そうして寒い笑いと冷徹な男たち。どことなくコーエン兄弟にも通ずるし、タランティーノ風でもあった。イアンもチキンだったしね・・・
そんな中でも被害者家族の赤ん坊オーリーが逞しい!そして女は強い!イアンには共感できないものの、イアンもサムも銃には絶対手を触れないところが良かったかな。で、オーリーはどうなったんだろ・・・犬のバンジョーに助けてもらってたらラッキーなんだけど・・・
むなくそが悪くなったけど惹き付けられた
レイプが癖になってる前科者の兄とお調子者の弟による欲望を鬱積させた猟師の兄弟。
世間との関わりが日に日に薄く苦い感じになってきている彼等の狩場に、キャンプをしにやってきた家族連れとカップルがひでえめに会う、
というホラー映画によくありそうな設定なのだが、
特にサイコパスという訳でもなく
浅はかに欲望優先のその日暮らしをしてきたであろうこの二人の犯罪へのタガのゆるさが恐い。
兄弟なのに人種が結構違う役者を選んだのも親が違うとか表現していたのかもしれない。
民度の低いそこそこ力の強い猟銃を持った男二人がローテンションのまま
なし崩し的にレイプから殺人を行っていく。
死体の処理もどうせ誰も来ねえしめんどくせえからいいとばかりにほっぽって行っちゃう。
殺人鬼の描き方が荒いのではなく、
行動が粗だらけで大した葛藤もなく殺人に手を染める二人をきちんと描写しているように思えた。
そして普通のアクションやらホラー映画を観ていて思う
『ああ!何で一人で行っちゃうの!』
とか
『ああここでなんで武器を奪わないでボーッとしてるの!』
ていうのが無かった。
いや、そんなシーンだらけなんだけども
ああそうなるかもねと不思議と納得させられた。
それは襲われる側に
実際こんな目に遭ったら出来ないよね?と思わさせられる描写があったからなような気がする。
助けの父は男二人の前では単純計算で助けになり得ない。
正に普通の映画だったら銃を奪うタイミングで
怯えすぎて一回銃に近寄ってやっぱりやめちゃうカップルの男性とその後の逃走。
しっかり演技していて
情けないなあとか苦笑したりとか出来なかった。
猟師側も
手首辺りを切られて普通だったら悔しそうに睨み付ける位のシーンな所を超慌てて止血したりと、
ああ猟師だからそういうとこ切られるとやばいとか知ってるからかなあと思わさせられた。
なんの罪も無く散々ひどい目にあって
ただ関係性に大きく傷を付けられたカップル。
救いが無くてただ世の中がちょっと悪くなっただけ。
映画的なカタルシスを排除して
むなくそが悪いなにかを突きつけて来る様な映画だった。
後
所々カットされてるのであれば
完全版が観たい。
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