「むなくそが悪くなったけど惹き付けられた」キリング・グラウンド あぶらさんの映画レビュー(感想・評価)
むなくそが悪くなったけど惹き付けられた
レイプが癖になってる前科者の兄とお調子者の弟による欲望を鬱積させた猟師の兄弟。
世間との関わりが日に日に薄く苦い感じになってきている彼等の狩場に、キャンプをしにやってきた家族連れとカップルがひでえめに会う、
というホラー映画によくありそうな設定なのだが、
特にサイコパスという訳でもなく
浅はかに欲望優先のその日暮らしをしてきたであろうこの二人の犯罪へのタガのゆるさが恐い。
兄弟なのに人種が結構違う役者を選んだのも親が違うとか表現していたのかもしれない。
民度の低いそこそこ力の強い猟銃を持った男二人がローテンションのまま
なし崩し的にレイプから殺人を行っていく。
死体の処理もどうせ誰も来ねえしめんどくせえからいいとばかりにほっぽって行っちゃう。
殺人鬼の描き方が荒いのではなく、
行動が粗だらけで大した葛藤もなく殺人に手を染める二人をきちんと描写しているように思えた。
そして普通のアクションやらホラー映画を観ていて思う
『ああ!何で一人で行っちゃうの!』
とか
『ああここでなんで武器を奪わないでボーッとしてるの!』
ていうのが無かった。
いや、そんなシーンだらけなんだけども
ああそうなるかもねと不思議と納得させられた。
それは襲われる側に
実際こんな目に遭ったら出来ないよね?と思わさせられる描写があったからなような気がする。
助けの父は男二人の前では単純計算で助けになり得ない。
正に普通の映画だったら銃を奪うタイミングで
怯えすぎて一回銃に近寄ってやっぱりやめちゃうカップルの男性とその後の逃走。
しっかり演技していて
情けないなあとか苦笑したりとか出来なかった。
猟師側も
手首辺りを切られて普通だったら悔しそうに睨み付ける位のシーンな所を超慌てて止血したりと、
ああ猟師だからそういうとこ切られるとやばいとか知ってるからかなあと思わさせられた。
なんの罪も無く散々ひどい目にあって
ただ関係性に大きく傷を付けられたカップル。
救いが無くてただ世の中がちょっと悪くなっただけ。
映画的なカタルシスを排除して
むなくそが悪いなにかを突きつけて来る様な映画だった。
後
所々カットされてるのであれば
完全版が観たい。