「ここは天国ですか」君の名前で僕を呼んで sannemusaさんの映画レビュー(感想・評価)
ここは天国ですか
映像と音楽が美しすぎて天国かと思った。
静寂で優しく、観るものの感情を静かに揺さぶる世界、穏やかな登場人物たちに、大島弓子の作品に似たものを感じた。
北イタリアの美しい夏。
朝、昼、夕、夜の光。
エリオとオリバーのもどかしい距離。
恋人たちの幸せ絶頂の時間。
どれもこれもくすぐったくってエモい。
夢のような時があっという間に過ぎ去り、オリバーとの別れを受け止めきれず悲しみのどん底に沈むエリオに父が語りかける言葉が優しい。
傷ついた心を無理して癒す必要はないと。噛み締めろと。
私も同じくエリオよりも人生の先輩だから父ちゃんの気持ちがよーくわかる。君は本当に奇跡的な、美しく、幸せな出会いをしたんだ。今耐えられない悲しみですらも素敵な感情であり、君の心をますます豊かにするひと時なのだ。
その言葉を噛みしめてきたかのようなラストシーン、オリバーとの電話の後のエリオのアップ長回しシーンが大好きだ。
そして、これが青春だ、初恋だ、愛だ、なんて単純な言葉で表現しようとはしないこの美しい世界が大好きだ。
君の名前で僕を呼ぶ、のは「月が綺麗ですね」の表現 と比べるとはるかに情熱的で楽しくて、欧米かって感じだけどそれがまた良い。クリスマスの電話のシーン思い出しただけで泣ける。
自分の育ったところはこんなに洗練されたゴージャスな家でも、イタリアの街並でもないけれど、郷愁を掻き立てられ。
あー 私も実家に帰って緑の中でゴロゴロしたい。川で思うまま泳ぎたい。
公開からは遅れての鑑賞だったけれど、結果的に夏恋しさをちょうどいい感じにに刺激され。よいタイミングで観れてよかった。