「感動ポルノで終わるか、啓蒙されるかは観客の振る舞い次第」ワンダー 君は太陽 LittleTitanさんの映画レビュー(感想・評価)
感動ポルノで終わるか、啓蒙されるかは観客の振る舞い次第
公開から7年経ってアマプラで鑑賞。見逃した事を後悔する程、胸に突き刺さった。顔が変形するトリーチャー・コリンズ症候群(TCS)の10歳児のAuggie (J. Tremblay)ばかりでなく、姉のVia (I. Vidovic)等の周辺人物が語る心情に、幾度も胸を突かれた。
学校という閉じた狭い社会で、友達と行き違ったり、孤立したりするのは、TCSがなくったって陥りガチ。もちろん、小学生ほど無神経に見かけを弄る年代もないので、バリバリlookismを発揮していじめるガキもいるだろう。一方で、単に人見知りでAuggieに声を掛けられない同級生もいる筈。Auggieは自分の事をジロジロ見て無視される事を嘆いていたが、自分も中学生の頃に、白人の留学生に対して同じ事をしてしまった公開がある。外国文化に興味があった自分は、白人の同級生をかなりチラチラ見てしまっていた記憶があるが、人見知りと引っ込み思案の合せ技で結局話しかけられた事はなかった。暫くして、彼の事を蟲師していると自分をかなり嫌っている事が分かる場面があり、Auggieと同様の思いを抱かせしまったと当時反省した。
姉のViaの心理描写も良い。TCSの大変さは理解していて弟のサポートもしたいし、両親の目が弟にばかり行くのも仕方ないと頭では分かっていても、自分だって時々ネコっ可愛がりしてほしい。幼馴染と疎遠になったり、自分に無関心な親に演劇の報告してないことを叱られた事に反発したり、TCSを抱えていなくても難しい年頃。
ただ何だかんだあっても、終盤で全てが上手く行き過ぎてしまう感もあった。本作のWikiでも言及されているように、実際のTCS患者から「感動ポルノ」との批判されても不思議はない。複数のTCS患者を追って、どのような体験するのが伝えるドキュメンタリーがあってもいい。ただ、先天的に五体不満足な障害者でも、社会に出ることができない方が居る一方で、乙武洋匡さんの様に社会で活躍し、高い発信力を持つ方もいる。TCSによる迫害で心を病んでしまい方もいるかもしれないが、本作のように周囲が偏見を持たなければ、TCSを持たない子と同じ様に学校生活を送れる子がいるという啓蒙に、本作がなっている気もする。ただ、TCSの子が皆Auggieのようには賢いわけでも、面白い子ではない事には注意。本作で学ぶべキはTCSへの子へのサポートの重要性であり、皆Auggieの様に上手く行くからサポートしなくていいやってなってしまったら、それこそが感動ポルノの弊害。