「見終わって心が暖まる作品」ワンダー 君は太陽 うそつきかもめさんの映画レビュー(感想・評価)
見終わって心が暖まる作品
てっきり、子役の男の子の成長と葛藤を中心に据えた、ハートウォーミングストーリーだとばかり思って、やや構えて見に行ったんですけど、そこにもうひとひねり加えた上質のドラマがありました。
具体的には、登場人物の一人一人を主人公に据え、章仕立てで話を展開することで、ある人物から見ると可哀想な男の子も、実は羨ましくて仕方がないという、皮肉でリアルな展開に変わっていき、ほとんどの人が映画の中でいい方向に成長します。
言ってみれば主役の男の子の顔が醜いのは、誰が見ても分かる可哀想なハンディキャップで、大人には守ってあげるべきポイントとして映りますが、子供にとっては「メガネ」「そばかす」「ガリガリ君」「デブ」などの、分かりやすい肉体的欠陥で、映画的にはそこを強調したことで一瞬で物語の方向性をみんなが理解できるという、アイキャッチの役割を果たすことになります。そこがこの映画の画期的なところで、怪物と少年の複合したキャラクターを持つ主人公というのはアニメでしか見ていない気がします。
個人的に感動したのはお姉ちゃんが舞台で熱演するシーン。劇中劇のセリフの一つ一つが身の回りの人物に当てはまり、まるで閉じ込めていた感情を吐き出すかのようにみんなの心に響きます。それにしても子役の演技がどれも素晴らしい!
中にはちょっとほろ苦い結末を迎える人もいますが、こんなに出て来るキャラすべてが成長するドラマもなかなか珍しいと思います。『THIS IS US36歳これから』なんかが好きな人にはきっとぴったりハマる映画でしょう。
お姉ちゃんの彼氏のバイオリンの腕前を披露して欲しかったのと、お父さんの影が薄いこと、その他、思ったのと違う展開になったこともいろいろありますが、全体的には満足できる一本でした。
ジュリア・ロバーツがしゃしゃり出て来ないのも良かった。
結局、誰にしろ欠点があって、そこをお互いが理解し、認めることが大切なのだと分からせてくれる映画です。息子に見せたいけど、興味ないんだろうなぁ。同じ年頃の子供たちが、どう思ったか、すごく気になります。