「飛び出すヒロイン、シアーシャ・ローナン」レディ・バード cmaさんの映画レビュー(感想・評価)
飛び出すヒロイン、シアーシャ・ローナン
シアーシャ・ローナンは「飛び出していく」ヒロインがよく似合う。定められた居場所におさまれない。周りとぶつかりながら、自分の場所を探そうともがく。
本作もまた…なのだが、新鮮なのは、友達や恋人以上に、家族とのかかわりが丁寧に描かれているところだ。決して声高ではないが、母、父、兄…とのさりげないやりとりが随所に織り込まれ、すっと心にしみる。一緒にリサイクルショップで買ったドレスを、ミシンを踏んで仕立て直す母。就職試験で鉢合わせした息子を、あたたかく励ます父。互いを想う気持ちが、言葉を超えて伝わってくる。
映画を観る側の幸せは、主人公が知り得ない登場人物それぞれの姿を、少し離れた・高いところから、密かに目の当たりに出来ることだと思う。本作で言えば、バスルームで会話する父母、ヒロインを無言で見守る兄とその恋人、深夜のテーブルで泣きながら手紙を書いては破る母。めんどくさくて、わずらわしいはずの家族が、じわじわと愛おしくなっていく。
時の流れと追いかけっこするような試行錯誤の末に、ヒロインは旅立つ。新たな場所でも、単身臆せず突き進む。そんな彼女が、母と「再び」ドライブをする、ラストシーンが秀逸だった。シアーシャ・ローナンは、薄闇から抜け出し、光に照らされるのが似合うヒロイン、とも言えるかもしれない。
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