「女にだってやれます!」ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
女にだってやれます!
終始面白くて、「スポットライト 世紀のスクープ」みたいだなと感じていたら同じ脚本家だった。この人は才能ありそう。
スピルバーグ監督のドラマチックな演出も良かったね。最近のスピルバーグ監督は初期の頃のようなドラマチックさが戻ってきていて良い。
内容は、報道の自由をかけた戦いの社会派ドラマだと思っていた。一応それで間違いではないけれど、トム・ハンクス演じるベンは野心家の編集長で、とにかくデカい記事を扱いたい。メリル・ストリープ演じるキャサリンは今の自分の立場を脱したい。そんな二人が(タイムズもだが)報道の自由を盾に裁判を戦い、やりたいことをやったという作品。
報道の自由どうのと言っているのは彼らの弁護士であって、ベンもキャサリンもタイムズもそんなことは言ってもいない。
メリル・ストリープのイメージは強い女性、独立した女性、実際にそういった役が多い。
本作では、最初の頃に銀行?との話し合いの場面で、上記のイメージとは全く違うキャラクターであることが露呈し、珍しく弱々しげな役なんだなと、作品のイメージである国家権力と戦う二人ともズレていたので少々ビックリした。
女性の立場が弱かった時代、キャサリンもまた見下されていた。それを跳ね返したい彼女は次第に強くなっていくが、この徐々に変化していき、最後にとても強く決断を下す場面は、さすがメリル・ストリープという貫禄だった。
勝訴のあと裁判所からキャサリンが出てくる場面で、階段の脇にズラリと並んだ女性たちが、大きな決断をして大きな裁判を戦ったキャサリンを、女王様を眺めるように羨望の眼差しで見上げる。とても印象的なシーン。
彼女たちは私もキャサリンのように、と考えたに違いない。
この瞬間に、これは女性たちの戦いの作品なのだなと理解した。
今、最前線で戦う強い独立した女性はキャサリンだ。あれれ?最初に書いたメリル・ストリープのイメージのまんまじゃないか。やっぱりメリルは強くないとね!
緊張感あるサスペンスにの中に「大統領=国、ではない」とか「抵抗に与したかった」とか、反体制的な要素で味付けしているけど、やっぱり一番は「女性の立場の向上」だったと思うね。
それと、ニクソン大統領についてちょっと知識があった方がより楽しめると思う。