「報道する使命と義務、知る権利」ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
報道する使命と義務、知る権利
スティーヴン・スピルバーグ×メリル・ストリープ×トム・ハンクス!
オスカーに愛されし顔合わせとオスカー好みの題材で、漏れなくオスカーにノミネート。
しかし、たった2部門(作品・主演女優)ノミネートだけで今回全く本命では無かったが、紛れもなく社会派映画の一級品。
ベトナム戦争の真実が記されたペンタゴンの最高機密文書を入手したワシントン・ポスト。
公表するか否か、決断迫られる…。
本作公開時に「アンビリバボー」でも特集。同題材と、社主キャサリンについて。
それを見ていて良かったと思う。見ていなかったら、序盤は退屈であったろう。
元々専業主婦だったキャサリン。
父の会社を夫が継いだが、自殺し、自分が継ぐ事に。
経営者として悪戦苦闘。
男社会に飛び込んだ故の偏見。
何より、亡き父と夫から受け継いだ会社を守る…。
劇中ではさらりと触れられる程度だったので、それらを知った上で見ると、よりキャサリンの苦悩や決断に重みが増した。
ライバル紙のNYタイムズが一部暴露した機密文書を、こちらもコピーで全て入手。
だが、これは“爆弾級”。
公表すれば、間違いなく世紀の大スクープ。
が、政府からは睨まれ、最悪の場合は社自体が潰される…。
圧力には屈せず、記者人生を懸けてまで掲載を訴える編集主幹のベン。
政府の圧力を恐れ、掲載には大反対の経営陣。
その板挟みのキャサリン…。
機密文書を入手してからは、さすがのスピルバーグ。小難しそうな社会派映画であっても、スリリングさやエンタメ性で一気に見せ切ってしまう。
スピルバーグらしい正攻法の演出や正義の訴えも一貫している。
苦悩滲み出るメリルの巧演と記者魂のトムの熱演。この両名優の共演と演技バトルがまさか見れるとは!
編集部内のセット、スピーディーなカメラワークと編集、ドラマチックなジョン・ウィリアムズの音楽…スピルバーグ組の充実の仕事ぶり。
『レディ・プレイヤー1』の製作を一時中止し、僅か9ヶ月で完成させたとはとても思えない!
実話モノ。映画になるくらいだから、オチは決まり切っている。
キャサリンは掲載を決断する…!
大スクープは、時として、自らや他者や社会までを変えてしまう。
それは、良くも悪くも。
案じて、伏せる事も時に仕方ないだろう。
が、国が故意に不正を隠し、国民に嘘をついている。
それを伏せる事など出来やしない。
圧力を掛けるのならば、掛けるがいい。
誰かが厚い壁をぶち破れば、後に続く者、同調する者が現れる。
社会に疑問を呈し、訴える事が出来なければ、民主主義とは言えない。それが出来てこそ、民主主義だ。
報道の自由とか、そんなジャーナリズム精神じゃない。
記者には報道する使命と義務があり、我々には知る権利がある。