「女性の尊厳。この映画をみて、一番残る印象がこれとは…。 見る前は報...」ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書 posuyumiさんの映画レビュー(感想・評価)
女性の尊厳。この映画をみて、一番残る印象がこれとは…。 見る前は報...
女性の尊厳。この映画をみて、一番残る印象がこれとは…。
見る前は報道の自由と公権力の攻防だと思ってました。
実際はそんな一本調子の話なんかじゃなかった。
ジャーナリストと施政者の距離感の変容期、
新聞社の個人保有から株式公開による社会の共有財産化への移行、
国家機密の暴露と報道の自由の境界線、
司法決定に応じない態度の是非。
これら重層的な問題をほぼ説明セリフ無しで肩書抜きのファーストネームでのやり取りで表現しきる。
ものすごく骨太。
そんななか、最初はほとんど画面の端にしか映らなかった女性たちが少しずつ、少しずつ、画面の中央に入り始め、ストーリーの要所にその存在感をみせていく。
鋭利な記事を書く女性記者だけではない。
電話の取り次ぎをする女性も。
政府側の弁護士助手も。
文書整理の修羅場にレモネード屋ごっこみたくサンドイッチを配るトム・ハンクスの妻がもっとも、メリル・ストリープの苦悩をわかっていた、そのことを思うとサンドイッチのくだりもまた、印象が変わる。あえて子供のレモネード屋ごっこと並べて描いておいてからの印象の変換であり、もう構成として巧みとしか言いようがない。
そして誰よりも。本当は夫がやるべき仕事だったのに、女の私なんかがー。この劣等感に囚われたメリル・ストリープが自ら意を決するまでの苦悩と葛藤、そして劣等感克服への流れが素晴らしく。
裁判のあと、演説するでもなく歩く道に彼女の決断を誇らしげに見つめる女性、女性、女性…。
映像とはなんと雄弁なのか。その顔顔顔に泣けて泣けて。
トム・ハンクスは映画のストーリーのほとんどをリードし且つ、メリル・ストリープの繊細な演技を邪魔しないバランスの良い押し出し感でした。
演技合戦があるのかと思いきや、決してぶつけない玄人ならではの相乗効果。
本当に、見応えのある映画でした。