劇場公開日 2018年3月30日

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「成長物語」ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書 tqさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5成長物語

2018年4月5日
iPhoneアプリから投稿

少年ジャンプとはまた別の。

そしてこれは脚色の薄いドキュメンタリーのようなもの。

製作されたステイツではそれなりの有名人故か、脚本としては若干端折られた感もあるけれど…キャサリン・グラハムは、筋金入りのお嬢さん人生から「社会への第一歩」を踏み出さざるを得なかった女性。

ヨーロッパのそれとはかなり異なるにせよ、所謂「上流社会丸出し」の、ある意味ではとても無垢なご婦人が致し方なく不似合い極まりない「社主」なんてものに収まってみるものの、なかなか一人称でビジネスの世界に入り込めずに「形ばかりのオーナー」という居心地の悪さを重ねる日々。

その覚悟のなさがIPOという重大案件への決意の緩さや戸惑い。しかし実はIPO自体は試金石ではなく布石だった。
まるで用意されたドラマのように、その縛りが伏線となり「社運を賭ける決断」を迫られる。

実際にthe Postが世間から一流紙と一目置かれるに至るのはラストにあるウォーターゲート報道を待たなくてはならないのだけれど、その助走はここから始まっている。

その助走をゆるゆると始め、しかし確実に一人称で走り始める姿、まさに成長物語。
「私は寝るわ」がターニングポイントか。

有名人故に「前提」が端折られた感のある脚本を補って余りあるメリル・ストリープの名演。
ややもすれば「ブン屋魂」が暴走するように描かれがちなベン・ブラッドリーの個性は活かした上で、実に味わい深い人物としたトム・ハンクスも流石。

「ノーラ・エフロンに捧ぐ」とあったのはカール・バーンスタインに係わることなのか?

個人的には、この映画が扱っている出来事そのものは(キャサリン・グラハムの自伝も読んでおり)有名な話だと認識していて新鮮味は薄かったのだが、実に素晴らしき成長譚だったと思う。

そしてこういった題材にすら適度にエンターティンメント性を与えてしまうのもスピルバーグの本懐だろうか。

tq