「メルヴィルが描く、自由が束縛された時代における変則的な男女の物語」モラン神父 ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
メルヴィルが描く、自由が束縛された時代における変則的な男女の物語
フランスの田舎町にイタリア軍が現れ駐留し始めたかと思うと、今度はナチスが大手をふるって占領を始める。次第に状況は悪化し、市民が命の危険や生活の息苦しさにさらされる中、主人公の女性にとって一人の神父の存在が大きな心の支えとなっていく。
ベルモンド演じるこの若き神父は頭ごなしに相手を否定したり、教義を押し付けることはしない。むしろ互いの心の扉を開き合う穏やかさを持ち、また時折見せる若さゆえのちょっとした言葉の乱雑さ、神父と信者の垣根を超えているようにも思える些細な仕草などが、物語に言いようのないダイナミズムを与えていく。
彼らの関係性はあくまで教義に関する言葉の応酬に留まるものの、そこに仄かなエロティシズムすら香っているように思えるのは私だけだろうか。少なくとも、極度に自由が抑圧された時代における「変則的な男女の物語」であることは間違いなさそう。なめらかなカメラワークと映像美も必見である。
コメントする