「スキマというスキマにボケとツッコミを詰め込んだ、完全に福田カラーのリメイク」50回目のファーストキス Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
スキマというスキマにボケとツッコミを詰め込んだ、完全に福田カラーのリメイク
"山田孝之がラブストーリー?"、"ラブストーリーをコメディの福田雄一監督が!"と戸惑ってしまうが、ヒロインに長澤まさみを迎えて、先入観を裏切る感動作に仕上げている。
原作は、ドリュー・バリモアとアダム・サンドラーの「50回目のファースト・キス」(50 First Dates /2004)で、米ソニーピクチャーズ自身による日本版リメイク作品になる。邦題タイトルから、中グロ[・]がなくなっている。
舞台がハワイで、プレイボーイのモテ男と、交通事故の後遺症による"短期記憶喪失障害(前向性健忘)"の女の子のラブストーリーである。彼女は交通事故以後の記憶が全て一晩でリセットされてしまう。彼氏は毎日、愛を告白しつづけ、毎日恋に落ちる。彼にとってのキスは、彼女にとってはいつでも"ファースト・キス"である。
健忘をテーマにした映画は、いわゆる"認知症"の闘病モノがあるが、ミステリーの伏線として使われることも多い。一方でラブストーリーでは本作のアレンジと思われる作品がいくつかあり、まあパクリではないが、近作では川口春奈と山崎賢人の「一週間フレンズ。」(2017)が思い浮かぶ。1日を1週間に広げた感じ(笑)。
オリジナル映画からの大きな裏切りはなく、丁寧になぞっている。男の子の職業が海洋獣医師から、天文研究者に変更されており、たびたび"星座"や"星空"、"天文学"のエピソードが挿入される。
福田監督といえば、「銀魂」(2017)、「斉木楠雄のΨ難」(2017)、「HK 変態仮面」(2013/2016)など数々のコミックからの実写版コメディの大ヒットで評価を上げてきた。本作もそこは福田監督らしく、スキマというスキマにボケとツッコミを詰め込んで、完全に福田カラーの作品になっている。"笑い"で緩めて、"シリアス"で感動させる。
監督や観客の妄想リクエストに完ぺきに応える女優・長澤まさみの面目躍如である。ある意味でオトコに媚びているのだが、うしろ指をさされない女優である。
TOHOシネマズ劇場の幕間ガールでおなじみの東宝シンデレラ、山崎紘菜が共演している。長澤まさみと同じ"東宝芸能"バーター出演かもしれないが、理由はなんにせよ、もっと使ってあげてほしい。(ソニーじゃなく東宝に!)
(2018/6/1 /TOHOシネマズ日比谷/ビスタ)